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投稿日:2023.02.20 
更新日:2023.03.02 

食品業界から見た物流2024年問題

食品業界から見た物流2024年問題

働き方改革関連法の施行により、2024年4月から「時間外労働の上限規制」が適用され、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されます。物流業界では、トラックドライバー不足が深刻化する中、この制度の適用によってさまざまな問題が生じると予想されており、これを『2024年問題』と呼んでいます。多くの物流企業では、2024年問題に対応するため、従来の仕事のやり方やルール、労務管理などの改善が必要と認識されています。

特に加工食品物流に関わるドライバーは、月平均100時間程度の時間外労働が発生していると言われており、今後さらにネット通販での食品に関わる物流需要が増えると、現状のままでは輸送能力が限界を迎える恐れがあると指摘されています。
当記事では、食品関連業界から2024年問題を見た時に、具体的にどのような問題があり、どういった対応をすべきなのかご紹介します。

参照:トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン
 

自動車運転業務に関する「時間外労働の上限規制」の概要

自動車運転業務に関する「時間外労働の上限規制」の概要

引用:トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン
 

「時間外労働の上限規制」では、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働く場合、「原則、月45時間かつ年360時間」以内と定めています。なお、特別な事情などで労使が特別条項に合意した場合、「年720時間まで(休日労働含まない)」の残業が認められます。大企業(2019年4月)や中小企業(2020年4月)では、既に時間外労働の上限規制が施行されており、物流関連企業でもドライバー以外の運行管理者、事務職、整備・技能職、倉庫作業職などではこの規制内容が適用されます。

ただ、自動車運転業務に関しては、5年間の猶予期間が設けられていて、この猶予期間が終わるのが2024年4月1日です。自動車運転業務の時間外労働の上限規制は、「年960時間(休日労働含まず)」となっており、1カ月の上限については規定が設けられていません。時間外労働の上限規制については、これを守らなかった場合、「6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が課せられる可能性があるなど、厳しい罰則が用意されています。

2024年4月以降、自動車運転業務の残業時間の上限規制が適用された場合、以下のような問題が発生すると予想されています。

  • ドライバー一人当たりの走行距離が短くなるため、長距離運搬のハードルが高くなり、会社の売上・利益減少が予想される
  • ドライバーの収入減少による離職が考えられ、さらにドライバー不足が加速すると予想される
  • 荷主企業の運賃上昇が予想される

時間外労働の上限規制は、上記のような問題を引き起こすと予想されており、多くの物流企業では、2024年問題に向けた対策への取り組みが急務とされています。
 

2024年問題への対応策

それでは、2024年問題への具体的な対応策についても解説していきます。残業時間短縮を目指すための対策はさまざまな手法が考えられますが、ここでは生産性向上や人材の確保を中心に、有効だと考えられている取り組みをご紹介します。
 

荷待ち時間・荷役時間の削減

ドラックドライバーの残業時間短縮を目指す場合、荷待ち時間や荷役時間の削減が重要なポイントになります。例えば、食品物流においては、バラ貨物の積卸し作業や選果場での仕分けなど、荷役作業・付帯作業に時間をとられて、労働時間が長くなる傾向があります。こういった問題については、流通全体を通した一貫パレチゼーション化が有効とされています。
パレットは、荷主の出荷施設内だけでの利用だけでなく、流通全体を通して利用(一貫パレチゼーション化)することで効率が高まります。一貫パレチゼーション化は、積み卸し時間の短縮のほか、作業負荷を軽減させるので、トラック運送業界での女性や高齢者などの多様な人材の活用にも繋がります。
 
引用:トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン
 

トラックドライバーの荷役作業時間や付帯作業時間を短縮できれば、トラックの構内滞留時間そのものを短縮することができます。つまり、荷主企業にとっても、限られたスペースを有効活用することができるようになるというメリットがあります。

また、2024年問題への対処としては、荷待ち時間の短縮も重要とされています。荷待ち時間の短縮については、以前、弊社が運営している別サイトのコラムでまとめていますので、以下をご参照ください。

 
参考:物流業界の課題。『トラック待機時間』を削減するためには?
 

高速道路の有効活用

高速道路の利用は、高速料金の負担など、いくつかの課題が存在することは確かです。ただ、高速道路を活用することにより、時間外手当の削減や運行回転数の向上など、さまざまなメリットが見込めます。高速道路を積極的に活用した運行計画を行うことで、下道運行と比較すると、納入遅延の危険を大幅に低減することができるため、荷主企業にとってもメリットがあると考えられます。したがって、荷主企業からの理解を得て、高速道路利用料金を運賃と別建てで収受できるような体制づくりを目指すことが重要です。

高速道路有効活用のメリット

  • 運転時間の短縮~労働時間・拘束時間の短縮
  • 運行効率の向上
  • 一般道における交通事故の削減
  • 燃費の改善、CO2削減等の環境改善
  • 荷主にとっての納入リードタイムの短縮効果
  • 労働時間短縮に伴うドライバーの時間外手当の削減

 

中継輸送の有効活用

中継輸送は、特に長距離輸送の『泊付き運行』の分野において、労働時間や運転時間の短縮に役立つ対策となり、ドライバーの負担を大幅に軽減することができます。中継輸送では、長時間労働となる1つの運行を複数のドライバーでワークシェアします。そのため、ドライバーは自宅での休息の機会が増え、体への負担軽減が期待できます。

中継輸送には、「①トレーラ・トラクタ方式」、「②貨物積替方式」、「③ドライバー交替方式」など、いくつかの方法があります。下図は、トレーラー・トラクタ方式の中継輸送をイラスト化したものですので、参考にしてください。
トレーラー・トラクタ方式の中継輸送
 
引用:トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン
 

まとめ

今回は、すぐそこまで迫っている2024年問題の概要と、2024年問題によって起こりうる課題、どのような対応策を検討すれば良いのかについて解説しました。
2024年問題は、簡単に言うと、トラックドライバーが働ける時間が短くなることで生じる問題のことを指しています。昨今、日本国内では、トラックドライバー不足が深刻化する中、残業時間に上限が設けられることでドライバーの収入が減少して、離職する人が増加するのではないかと問題視されています。
2024年問題は、食品物流にもさまざまな影響を与えると予想されます。各企業で早めの対策が求められています。

この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。