食品
投稿日:2024.06.11
更新日:2024.06.25
近年、世界中で「プラントベースフード」への注目が集まっており、日本国内でも急速に関心が高まっています。プラントベースフードとは、植物由来の原材料を用いて肉や魚など動物性食品を再現した加工品のことを指します。最近では、大手ファーストフードチェーンやスーパーなど、身近な店舗で気軽に購入できるようになっています。実際、日本国内におけるプラントベースフードの市場規模は急速に拡大しており、2010年から2020年までのわずか10年で約5倍にまで成長したとされています。※1
ただ、プラントベースフードについては、具体的にどのような考えで取り入れられはじめたのか分からないという方もまだ多くいます。また「植物由来の原材料を用いる」と聞くと、「ヴィーガン」や「ベジタリアン」のような食事法をイメージする方も少なくありません。そこで当記事では、昨今、世界中で注目を集めつつあるプラントベースフードについて、これが「ヴィーガン」や「ベジタリアン」と何が違うのか、またなぜこれほどの注目を集めているのかについて解説します。
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プラントベースは、「Plant(植物)」と「Based(由来)」を組み合わせて作られた言葉です。定義については、厳密に決められているわけではなく、植物由来の原材料を用いて肉や魚など動物性食品を再現するなど、積極的に植物由来のものを取り入れるという考え方を指しています。
日本国内では、食品にまつわる言葉として認識が広がり、100%もしくはそのほとんどが植物由来の原材料から作られている食品が「プラントベースフード(食品)」と呼ばれています。消費者庁の資料では、以下のように定義されています。
近年、多様な消費者のニーズを反映し、動物性原材料ではなく、植物由来の原材料を使用した食品が増えています。
プラントベース食品は、このような植物由来の原材料を使用し、畜産物や水産物に似せて作られていることが特徴です。
引用:消費者庁資料より
それでは、プラントベースと呼ばれる考え方は、「ヴィーガン」や「ベジタリアン」と何が違うのかも解説します。
プラントベースは、植物性の食事をメインにした食生活になることから、「ヴィーガン」や「ベジタリアン」と混同しがちです。しかし、プラントベースは、「ヴィーガン」や「ベジタリアン」とは明確に異なる点があります。まず、「ヴィーガン」や「ベジタリアン」の定義をご紹介します。
「ヴィーガン」や「ベジタリアン」は、動物性食品の摂生を『制限』するという食の選択肢です。しかし、プラントベースは、食肉を制限するわけではなく、あくまでも「積極的に植物由来の食品を取り入れよう」という意味合いが強く、食に対する自由度が高い点が特徴です。プラントベースは、ヴィーガンなどと異なり、厳密なルールが設けられていないため、動物性の食材を食べても構わないですし、従来の自分の食生活や趣向を大きく変えることなく、気軽に取り入れることができるため、幅広い消費者に受け入れられるようになったとされます。
参照:ベジタリアン協会
プラントベースフードは、健康志向の高まりや環境への配慮などが背景となり、世界中で関心が高まっています。ここでは、日本国内でも急速に市場が拡大しているプラントベースフードについて、注目されている背景をご紹介します。
プラントベースフードは、消費者の健康志向の高まりが、市場の拡大に大きな影響を与えていると言われています。日本国内のスーパーなどでも、大豆ミートやアーモンドミルクといったプラントベースフードが手軽に手に入るようになっていますが、これらは低脂質で繊維質を多く含む植物由来の食材であることから、ヘルシー志向で健康意識の高い方から注目を集めるようになっています。
プラントベースフードが注目を集める背景には、地球温暖化や水資源の枯渇など、さまざまな環境問題の解決に貢献できるという点もあります。
例えば、近年世界中で注目されている「大豆ミート」ですが、原材料となる大豆を育てる際に排出される二酸化炭素や使用する水資源の量が、畜産(食肉)と比較すると、はるかに少なくなるとされています。普段私たちが何気なく食べている牛肉ですが、家畜が肉として出荷できる状態になるまでにはたくさんの水が使用されています。数年をかけて飼育される牛は、1kgの牛肉を作るために、約2万倍もの水が必要とされています。
日本は、比較的水資源が豊富な国であるため「水資源の枯渇」と聞いてもピンとこない方が多いと思います。しかし、世界各国を見てみると水の所有権や水質汚濁の問題などによる水紛争が起きている地域があります。プラントベースフードは、畜産と比較すると、環境への負荷が少なくなることから、SDGsの観点からも注目度が高くなっているのです。
参照:水紛争について
日本では、少子高齢化や人口の減少が社会問題となっていますが、世界人口で考えた時には、むしろ急速な人口増加が問題視されています。国連の調査によると、2020年の世界人口は77億人とされていますが、30年後の2050年には、なんと20億人も増加し97億人に達するのではないかと推測されています。世界人口が増加すれば。当然消費される食糧も増えるため、特にタンパク質を始めとした食料の不足が問題視されています。そこで、肉類の供給を増やそうと考えた際に、さらなる温室効果ガスの排出や水資源の枯渇と言った環境問題との兼ね合いがあり、動物性たんぱく質だけに頼ることはできないという実情があります。
そこで、植物性たんぱく質にシフトしていくことで、世界的なたんぱく質不足を回避することができるのではないかと考えられ、プラントベースフードが注目を集めているのです。
今回は、環境負荷低減にもつながる新たな食事法として注目されているプラントベースフードについて解説しました。
プラントベースフードは、積極的に植物由来の食品を取り入れようという考え方で、ヴィーガンやベジタリアンのように動物性食品を厳格に制限するわけではありません。そのため、食生活の見直しを考えた際には、多くの方が取り入れやすいと感じることから、世界中で注目されています。
プラントベースフードは、CO2排出量削減や水資源問題、世界人口の増加による食糧不足など、さまざまな問題の解決にも貢献できる考え方とされています。しかし、その他にも環境への配慮や持続可能な社会の実現のためにの取り組みは様々あります。無理のない範囲で初めて見てはいかがでしょう。
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この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。