食品
投稿日:2023.12.20
更新日:2024.05.07
今回は、食品工場におけるカビ対策のポイントについて解説します。総菜や菓子、保存性の良いレトルト食品など、私たちの食生活を支えてくれている食品工場は、人が口に入れるものを製造するという観点から、衛生面でさまざまな工夫が施されています。
しかし、食品工場は、製造過程で湿気・熱が発生し、また食品そのものに養分があることから、カビが発生・繁殖を非常にしやすい条件が整っています。
そこで当記事では、食品工場でカビ被害を防ぐためにおさえておくべきポイントをご紹介します。
Contents
カビの繁殖に適している条件と、食品工場内でカビが発生した場合、どのような影響が考えられるのかについて解説します。
食品工場は、製造過程で湿度や熱が発生する上、カビの養分となるものが多く存在することから、カビの繁殖に非常に適していると言われています。それでは、カビの発生、繁殖に適した条件とはどのような条件なのでしょうか?一般的に、カビは以下の条件下で生育すると言われています。
これからも分かるように、食品工場の中で、結露が発生しているような環境は、カビの生育に非常に適した環境と言えます。逆に言えば、温度・湿度の管理がなされている環境下では、カビの発生、繁殖を防ぐことができます。
空気中には、カビの胞子・菌糸がどこにでも漂っており、食品に付着します。そして、温度・湿度管理がなされておらず、カビの生育条件が整った環境では、食品を栄養としてカビが繁殖します。そして、カビが発生した食品から新たな胞子を発生させ、ねずみ算的に増殖し、一気にカビ被害が拡散していきます。
カビの中には-5℃から発育可能な種が存在し、80℃で30分程度加熱したとしても死滅しない種も発見されています。
カビの繁殖条件を確認してみると、食品工場は全ての条件を兼ね備えた環境になると言えるでしょう。カビは、温度・湿度・栄養の3つの条件が揃うと発生する可能性が高くなるのですが、食品工場内でカビ被害が発生した場合、さまざまな影響が出ると考えられます。
例えば、カビは食品の味や匂いを変えたり、腐らせたりします。さらに恐ろしいのは、カビの中には、食中毒やがんの原因となる毒を生産するものがいたり、アレルギー症状の原因となるカビもある点です。食品工場内で、カビ被害が発生した時には、以下のような問題に発展する可能性があります。
食品工場内でカビが繁殖すると、そこで働く従業員についても、アレルギーや真菌感染症など、健康被害に発展する恐れがあります。さらに、出荷した製品による食品事故が発生した場合、製品回収などの深刻な問題につながり、企業の信頼を損なう大問題にまで発展する可能性があります。
食品工場では、さまざまな製品が製造されていますが、中でもパンやお餅、ケーキなど、でんぷんや糖分を含んだ食品は特にカビが発生しやすいため、これらの食品を取り扱う工場は特に注意が必要です。
食品工場におけるカビ対策について解説します。食品におけるカビ対策では、食中毒菌などの微生物制御の3原則「つけない」・「増やさない」・「やっつける」が基本となります。ただし、カビの生態的な特徴から、細菌などとは対策のポイントが微妙に異なる部分もあります。
ここでは、食品工場の建設計画や改修計画の時点で検討しておきたいカビ対策を中心に解説します。
食品工場には、カビが繁殖しやすい場所が多く存在しますので、目に見える範囲は、日々の清掃を行うことでカビを発生させないように注意しているはずです。しかし、食品工場の中には、目に見えない部分、手の届かない部分などにカビが発生しやすいポイントが多いため、カビ対策としては「カビが生えにくい施設を作る」ことが重要と言えます。
例えば、以下のような点に注意すると良いでしょう。
食品工場は、建設・改修計画の時点で、「カビが発生しにくい施設を作る」という視点を持っておくことが非常に重要です。なお、食品工場建設時のカビ対策については、以前、別の記事で詳しく解説していますので、以下の記事も確認してください。
食品工場におけるカビ対策では、カビを「増やさない」という視点を持つことも大切です。カビは、繁殖に適した条件がある一方、弱点やコントロール方法もあります。例えば、カビは「熱に弱い」「乾燥に弱い」「低温環境に弱い」などの特徴を抑えておけば、食品工場内全体にカビが広がることを防ぐことができます。
食品工場で、カビを「増やさない」ためには、以下のようなポイントに注意すると良いでしょう。
カビは、どれだけ慎重に対策を施していても、発生を完全に防ぐのは難しいです。したがって、発生したカビを早期に発見し、「やっつける」ことができるようにすることも大切です。
食品工場におけるカビ対策は、上で紹介した「つけない」・「増やさない」・「やっつける」の3原則が基本となります。ただ、これに加えて行っておきたいのが、カビの汚染経路を確認するという対策です。
製造現場でカビが発生した際には、汚染経路を明確にすることで、その後のカビ被害を防ぐことができるかもしれません。ここでは、食品工場におけるカビの汚染経路と、そこからカビを発生させないための対策を簡単に解説します。
食品工場の製造エリアにカビが侵入する汚染経路として考えられるのは以下のようなケースです。
食品工場では、適切なカビ対策を行っていたとしても、上記のような汚染経路でカビが発生してしまう可能性があります。したがって、製造エリアでカビを発見した時には、「どこからカビが発生したのか?」を確認し、その汚染経路をきちんと塞ぐことも大切です。
例えば、それぞれの汚染経路については、以下のような対策が考えられます。
今回は、食品工場におけるカビ対策を解説しました。記事内でご紹介したように、カビ対策では、「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つが鉄則で、カビが発生してから「やっつける」という対処をすることも可能です。
しかし、人が口にする食品を製造する食品工場では、より安全で清潔な環境を保つために、「つけない」「増やさない」という部分の対策が非常に重要です。食品工場の建設や改修計画の初期段階で、カビ対策について慎重に検討することで、より効果的な対策が施せるようになります。
カビ対策は、特別な知識が必要となるため、食品工場の改修や建設を計画する際は専門知識と、多くの施工実績を持つファクタスに、ぜひご相談ください。
この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。