革新/改善
投稿日:2023.06.27
更新日:2023.07.12
今回は、さまざまな環境問題やSDGsの貢献にもつながると言われている革新的新素材『LIMEX(ライメックス)』について解説します。
『LIMEX(ライメックス)』は、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、さまざまな取り組みが始まっている中で、紙やプラスチックの代替素材として注目される製品で、SDGsを推進する企業の中では、既にさまざまな部分に採用されています。ただ、まだまだ新しい素材なので、LIMEXという名称は聞いたことがあるけれど「具体的にどのような製品なのかは知らない…」という方も少なくありません。
そこで当記事では、LIMEXの基礎知識やこの素材が持つメリットなどを解説します。
※「LIMEX」は株式会社TBMの登録商標です
『LIMEX(ライメックス)』は、石灰石(炭酸カルシウム)を主原料とした新素材のことで、株式会社TBMが国内で自社開発(特許取得)した環境配慮型の新素材です。この素材は、既存の樹脂成形技術を用いることでさまざまなアイテムを作り出すことができ、さらに使用後も高効率でリサイクルできる点が特徴です。
水資源の保護や石油由来樹脂の使用量削減、森林資源保護に貢献することができるため、昨今、世界共通の課題となっている「海洋プラスチック問題」や「気候変動問題」などの環境問題解決への糸口になると期待されています。実際に、TBM社が公表した情報によると、2022年11月時点で、10,000以上の企業や自治体等がLIMEXを採用しています。
それでは、LIMEXが我々が直面するさまざまな環境問題解決の糸口になると期待されているのはなぜなのでしょうか?これは、LIMEXが石灰石(炭酸カルシウム)を主原料として作られているからです。
『LIMEX(ライメックス)』という名称は、石灰石が英語で『limestone』と表現されることに由来しているのですが、この石灰石は地球上に豊富に存在しています。実は、さまざまなモノを外国から輸入している日本でも、この石灰石に関しては100%自給自足が可能だと言われるほどです。
つまりLIMEXは、石油や森林資源、水資源などと比較して、枯渇するリスクが低い『石灰石』を活用することで、世界中の人々が直面している環境問題の解決を前進させることができる新素材なのです。
参照:LIMEX特設サイトより
それではここから、LIMEXの特長について具体的に解説します。
LIMEXは、プラスチックや紙の代替となる新素材で、さまざまな用途で利用されています。
■紙の代替としてLIMEXを利用する
メニュー表やポスター・名刺などの印刷媒体のほか、パッケージや飲料カップなど、紙の代替製品を作ることが可能です。さらに、従来のパルプ由来の紙と比較した場合、以下のような特徴を持っています。
■プラスチックの代替としてLIMEXを利用する
LIMEXは、プラスチックの代替えとして、クリアファイルやレジ袋、手穴付きの袋などの製品はもちろん、文房具や食品容器、飲料カップ、プラモデルなど、さまざまな製品に活用されています。
LIMEXは、汎用プラスチックと同様に、真空、射出、インフレーションなど、多様な成型方法に対応していますので、加工は特別な設備も必要とせず、既存の整形設備が活用できます。
関連記事:プラスチック削減に向けて、大手食品関連企業の取り組み事例をご紹介!
LIMEXは、紙やプラスチックの代替え素材として、「水問題」「CO2排出量の抑制」にも貢献しています。
■CO2排出の抑制、石油資源の保全について
LIMEXは炭酸カルシウムなどの無機物を主原料としているため、プラスチックの代替として利用する場合、石油資源の使用量を削減することが可能です。
また、LIMEXは、原材料の調達から処分(焼却)までのライフサイクル全体でCO2の排出抑制が可能です。石灰石も焼却すればCO2を排出しますが、ポリプロピレンなどの石油由来プラスチックと比較すると、分子構造の違いにより燃焼時のCO2排出量は約58%少なくなるとされています。
■水資源の保全に貢献する
引用:株式会社TBM公式サイトより
LIMEXシートを製造する際は、水をほとんど使いません。紙と比較しシート1トンあたりの工場における水利用量を約97%削減することが可能で、水資源の保全に貢献できます。
■森林資源の保全に貢献する
石灰石を主原料とするLIMEXを紙の代替として使用するということは、森林資源の保全に繋がります。日本で作られる紙は、原料となる木材パルプの大半を輸入に頼っています。しかし、LIMEXの主原料となる石灰石は、上述のように、100%国内で調達することが可能です。
■アップワードリサイクル
LIMEXの特長として特筆すべき点が『アップワードリサイクル』だと言われています。
従来の紙製品についても、使用した紙を回収して、再生紙として再利用するという筋道は既にできています。ただ従来の紙のリサイクルは「紙から紙に」と、水平リサイクルが行われるのが一般的です。
しかしLIMEXの場合は、使い終わったLIMEX製印刷物を回収し、それをプラスチック代替製品として再利用するなど、「元の製品よりも次元・価値の高いモノに生まれ変わらせる」というアップワードリサイクルが可能です。実際に、鯖江市ではLIMEXの印刷物を回収して漆仕上げの食器などにアップサイクルするという取り組みが進められています。
参照:鯖江市においてLIMEXのアップサイクルを通じた地域モデルの構築を目指す
■SDGsへの取り組みをアピールしやすい
LIMEXは、SDGsの17の開発目標のうち以下の8つの目標に貢献することができます。
LIMEXは、上記8つの目標に貢献することができます。
そして、LIMEXを採用する企業にとっては、SDGsに取り組みやすい、SDGsに取り組んでいることをアピールしやすいなどのメリットがあります。例えば、紙の名刺を使用している企業がLIMEXの名刺に変更するだけで、SDGsへの取り組みになります。
関連記事:なぜ食品産業がSDGsに取り組むのか?実際の取り組み事例もご紹介!
今回は、SDGsへの貢献やさまざまな環境問題の解決に貢献できるエコ素材として注目されている『LIMEX』について解説しました。
LIMEXは、水問題だけでなくCO2の排出量削減や森林の保全など、さまざまな環境問題解決のための一つの手段になります。採用できる部分がないか、この機会にぜひご検討ください。
この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。