食品
投稿日:2023.09.25
更新日:2023.09.29
食品工場には、製品を製造するための機械・設備を始めとして、衛生管理や品質維持のための空調や換気設備など、さまざまな設備が導入されています。食品工場を建設する際は、衛生面や品質維持だけでなく、企業の利益を少しでも向上させることができるように、生産性や省エネ効率なども確認し、慎重に導入する設備が選定されているはずです。
しかし、食品工場に導入される設備については、運用を始めてからのメンテナンス計画も非常に重要だという点が見落とされがちです。どのような設備でも、使用することで徐々に劣化が進み、最悪の場合は、製品を製造する設備のメンテナンス不足が原因となり、異物混入などの食品事故に発展する恐れもあります。
そこで当記事では、食品工場における設備メンテナンスの重要性やポイントについて解説します。
食品工場に導入する設備選びのポイントは、こちらの記事で解説しています。
Contents
設備メンテナンスは、一般的に設備の安全性や性能を正常な状態に保つために行う仕事と定義されています。
設備メンテナンスの対象とは、食品工場などにおける製造設備が真っ先に連想されると思いますが、実際には、建築物やインフラ設備、工具類など、多種多様なものを含んでいます。
設備メンテナンスにおいては、設備の監視を行う「保守」の視点と、安全性を維持する「保全」の視点の両方が重要で、予期せぬ設備のストップによるダウンタイムを最小化し、生産性を維持するために重要な役割を担っています。
例えば、どのような設備でも、一定期間使用していると、摩耗や疲労などを原因に壊れてしまい、正常に動かなくなってしまいます。設備が重大な故障や不具合を起こすと、生産活動が停止することになり、企業にとって大きな損失になります。したがって、定期的に設備の掃除や部品交換などの修理を行うことで、設備の重大な故障などを防ぐ必要があります。
設備メンテナンスは、メンテナンスの方式によって次の3種類に分類することができます。
種類 | 起点 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
事後メンテナンス | 問題の発生 | パーツや機器を寿命ギリギリまで使い切ることが可能 | 機器や設備が壊れてから対処するので生産稼働率に悪影響がある |
予防メンテナンス | スケジュール | 定期的に作業するため計画を立てやすい |
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予知メンテナンス | 不具合の兆候 | メンテナンスに適したタイミングを事前に知ることが可能 |
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設備メンテナンスは、メンテナンスの方式によって一長一短があります。したがって、どれか一つのメンテナンス方式に頼るのではなく、対象の状況に合わせて使い分けられるような体制を作っておくことが大切です。事後メンテナンスだけに頼った場合、メンテナンスにかかるコストを削減できるかもしれませんが、突然の故障の発生で、生産活動をストップせざるを得なくなり、それ以上の損失を被るリスクが生じます。
それでは、食品工場において、生産設備のメンテナンス計画をたてるためのポイントを解説します。
どのような設備でも、メーカーがメンテナンス頻度や箇所を設定しています。例えば、内蔵される消耗部品についてどれぐらいの頻度で交換すべきか、日常的に清掃が必要な箇所がどこか、ある症状に対して考えられる不具合が何かなど、メンテナンスに関する冊子やマニュアルを設備に付属してくれるはずです。生産設備のメンテナンスは、メーカーが用意しているマニュアルが基本となるので、まずはこれを参照して、具体的なメンテナンス計画を立てていく必要があります。
メーカーが用意するメンテナンスマニュアルについては、これに従わない形でメンテナンスを行うと、何らかの異常が発生した時に、マニュアル通りのメンテナンスを行っていないことが異常の原因とされる場合があります。この時は、「想定外の使用」と判断され、メーカーによる保証などが受けられなくなるリスクがあるので注意しましょう。
自社の設備メンテナンス計画を立てる場合も、基本的にはメーカーのメンテナンスマニュアルを遵守してその内容を決めるのがおすすめです。
上述の通り、設備メンテナンスにも3種類の方式が存在します。したがって、メンテナンスを行う対象機器などについて、どの方式でメンテナンスを行うのか配分を決める必要があります。一般的には、「予防(定期)⇒予知⇒事後」の順で優先順位を決定することが多いです。
例えば、頻繁に壊れる可能性がある消耗部品や日常的な清掃が必要な箇所については、定期メンテナンスの範囲でメンテナンスします。これに加えて、センサー機器などを用いて設備の状態を常時監視し、そこで収集・分析されたデータや記録に基づいて、故障の兆候を見つけた時に不定期にメンテナンス作業を行います。事後メンテナンスは、これでも抜けがあったり、災害などの予期せぬ事態で設備が停止した場合にのみ行うと良いでしょう。
なお、メンテナンスの優先順位については、設備の種類だけでなく、故障した際に受けるリスクの大きさや使用用途なども考慮して決めることが大切です。
実施する作業が決定したら、メンテナンスマニュアルとメンテナンスシートを作成します。メンテナンスマニュアルは、作業項目だけでなく、どの設備のどの部分に対して何を行うのかまで、誰が実施しても同じ作業ができるようにするのが目的です。なお、メンテナンスマニュアルには、安全対策や設置場所、作業時間のルールなど、細やかな情報を記載しましょう。
メンテナンスシートについては、どこを点検するかの項目に合わせて、評価基準もきちんと設定しましょう。そうすることで、誰が確認しても設備の状態を正確に把握することができます。
それでは最後に、食品工場の設備メンテナンスについて、実際の改善事例をご紹介します。
ある食品工場では、包装工程に使用する設備が経年劣化しており、モーターやコンベアが突然故障することが多くなりました。その結果、製造ラインの停止が頻発してしまうことで、安定的な生産活動が行えなくなっていました。
食品工場で使用される設備の中には、特殊なモーターが使用されている場合があり、これが故障すると新たなモーターの納品までに数カ月もの時間を要し、生産・出荷ラインに非常に深刻な影響を与えてしまいます。
そこでこの食品工場では、故障する前に不備を検知できるよう、予知保全システムを導入しました。 波形を通して故障の可能性を察知するほか、故障時の波形を機械が学習することで、始業前点検時に破損前の予兆検知が可能になりました。これにより、生産ラインをストップさせることなくメンテナンスが可能になり、さらにメンテナンスコストの削減や予備部品も最低限におさえることができたとされています。
食品工場の設備メンテナンスは、設備を長く使い、稼働を安定させるために重要な作業です。
主に、予防メンテナンス・予知メンテナンス・事後メンテナンスの3種類があり、それぞれのメンテナンスを適切に使い分けるのはもちろん、メンテナンスを依頼する業者選びも大切なポイントになります。
新しく設備を導入する場合は、その設備に詳しい専門メーカーにメンテナンスについても相談しましょう。
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この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。