工場
投稿日:2023.05.11
更新日:2023.05.29
食品加工工場や飲食店の厨房に導入される排気装置に欠かせない排気フードには、さまざまな種類があります。種類によってメリットやデメリットが異なる他、適応する作業環境も異なります。
当記事では、排気フードの役割と、3つの排気フードについて、それぞれの特徴と選び方を解説します。
排気フードは、調理などに伴う油脂や煤(すす)を含んだ煙や水蒸気を室内に拡散させることなく、迅速に排気するために取り付けられる設備です。熱機器の上部を囲う不燃性の鋼板(主にステンレス)で作られている天蓋がフードと呼ばれています。
食品工場では、オーブンなどによる加熱や、調理窯などから立ち上る水蒸気により、室内に過剰な熱や湿気が発生します。この過剰な熱や湿気は、調理場の衛生環境面の問題だけでなく、高温多湿な環境下で作業を行う従業員が熱中症を発症するリスクがあり、作業面においても課題となります。
厚生労働省が作成した「大量調理施設衛生管理マニュアル」によると、厨房などの施設設備の管理においては、以下のような環境が望ましいとされています。
施設は十分な換気を行い、高温多湿を避けること。調理場は湿度80%以下、温度は25℃以下に保つことが望ましい。
引用:厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」
排気フードの選定にあたっては、衛生面や作業環境以外に省エネ性などを含めたコストも気になる点です。次に紹介するフードの形状ごとの特徴をぜひご確認ください。
排気フードには、さまざまな種類があります。そして、導入するフードの種類によってメリットやデメリットがあるほか、適応する作業環境が異なります。ここでは次の3つの排気フードの特徴をご紹介します。
箱型フードは、最も一般的な排気フードです。食品工場などの、大量の食品を一度に調理する必要がある大規模施設でも、効率よく蒸気を排気することができます。また、他のフードと比較してもシンプルな構造であることから、施工性が高く、可変性にも優れているため、作業環境に合わせやすい点と、イニシャルコストを抑えられる点がメリットです。
ただし、以下の点に注意が必要です。
箱型フードは、天板が平らになっています。そのため、調理中の蒸気で天板に水滴がつき、生産エリアに落下する危険があるなど、衛生面で注意が必要です。
ガスなどを使用している場合、熱源からフードまでの高さは80cm以上離す必要がありますが、運営上必要な作業スペースを確保した上で、蒸気を効率よく排気するためには、フードの高さをできる限り低く設定し、必要な大きさを確保し、設計する必要があります。
山形フードは箱型と比較し、天板に蒸気がたまり、水滴が落下することを防ぐ、衛生的な形状であると言えます。
上図のように、天板についた水滴が両端の斜面から流れていくため、生産エリアに水滴が落ちることを防げます。
また、オプションで赤丸部分のような整流板を設置することで、衛生的な機能はそのままに、省エネ効果、ランニングコストや騒音の低減が期待できます
食品工場などの大型施設では、煮炊きなどにより大量の蒸気が発生する際、蒸気を回収しきれず、フードから漏れてしまうという事例が発生する場合があります。これが、整流板を取り付けることにより、効率的に蒸気を排気できるようになり、作業環境の悪化などを防ぎます。
整流板の設置は、一見すると「蒸気の吸込口を塞いでいる」ように見えます。しかし、あえて吸込口を狭くすることで、空気の勢いが増す仕組みとなり、回収しきれないという事態を防止することができます。さらに、整流板の取り付けによる『排気能力』の向上は、『排気風量』を低減することができるというメリットも得られます。
これにより、『排気ファン』、『排気ダクト』、『グリスフィルター』、『防火ダンパー』などの仕様を抑えることができ、省エネ性の向上や騒音の低減などのメリットも得られます。
注意が必要な点は、想定よりも蒸気が多い時に、期待しているほどの効果が得られない場合がある点です。したがって、それぞれの生産機械から発生する『蒸気』については事前に把握し設計する必要があります。
最後は『給排気一体型』と呼ばれるフードです。このタイプは、文字通り給気機能と排気機能が一体となったフードです。調理などにより生じる蒸気を、効率的に排気するのに必要な給気量を確保するとともに、空調負荷の抑制を目的に設計されています。
例えば、以下のような、給気の吹出し口が『下吹きタイプ』のフードを用意すれば、エアカーテン効果により、蒸気を逃がさず排気することができます。
使用する場所によっては、排気が上手く機能しないケースがある点に注意が必要です。例えば、給気不足の環境下では、排気も十分に行えなくなるため、室内に煙や匂いがこもる可能性が考えられます。
関連記事:給排気一体型フードの利点と問題点
記事内でご紹介した3つの排気フードについて、いくつかの観点で比較し、表にまとめます。
– | 箱型フード | 山型フード | 給排気一体型フード |
---|---|---|---|
イニシャルコスト | ◎ | 〇 | △ |
ランニングコスト | 〇 | ◎ | 〇 |
省エネ | 〇 | ◎ | 〇 |
耐騒音性 | 〇 | ◎ | 〇 |
可変性 | ◎ | 〇 | 〇 |
衛生度 | △ | ◎ | ◎ |
効率性 | 〇 | ◎ | ◎ |
温度環境 | 〇 | 〇 | ◎ |
今回は、食品加工工場や飲食店の厨房において、欠かせない設備である排気フードについて解説しました。この記事でご紹介したように、一口に排気フードと言っても、さまざまな形状の違いがあり、どのタイプを導入するかによって得られるメリットや運用上の注意点が異なります。
それぞれに一長一短があり、施工性や製品価格が異なるため、導入にかかるイニシャルコストなども大きく変わります。『生産環境などを考慮』し『適材適所』で選定し、快適な作業環境を実現しましょう。
排気フードの導入やリニューアルなどの設備投資や、食品工場の建設やリニューアルをご検討の方は食品関連施設の実績が多い建設会社【三和建設株式会社】に是非ご相談ください。
関連記事:食品業界で続く設備投資の状況について
この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。