食品
投稿日:2024.03.05
更新日:2024.03.29
食品工場において、製造する食品の安全性を確保する対策では、HACCPによる衛生管理の導入が重要とされ、日本国内でも義務化されています。この方法は、食品の製造工程中にある、安全を阻害する要因を特定して、原材料の入荷から製造、出荷へと続く各工程の中で、危害の防止につながるポイントを継続的に管理することで食品の安全を確保します。
しかし、HACCPは性善説に基づいた食品安全への取り組みであることから、悪意を持った人間による意図的・人為的な異物混入などの食品事故を防ぐことは難しく、昨今では、食品衛生を脅かす悪意のある行動や意図的な異物混入などを防ぐための取り組みとして「食品防御(フードディフェンス)」という考え方が重要視されています。
食品防御は、悪意のある第三者による意図的な異物混入など、食品の安全を妨げる行為を、未然に防止する取り組みとして注目されています。そこで当記事では、より安全な食品を提供するため、食品工場が検討しなければならないセキュリティ強化のポイントについて解説します。
関連:HACCP(ハサップ)とは?義務化された食品衛生管理手法をわかりやすく解説
Contents
食品工場において、フードディフェンスなどのセキュリティ強化が注目され始めたのは、以下のような悪意を持った人による食品事故が実際に発生したためです。
このように、食品工場での食品事故は、性善説に基づいたHACCPによる衛生管理だけで防ぐことは難しいと考えられます。上述したような、悪意がある第三者による異物の混入を防ぐにはフードディフェンスの考えを取り入れ、食品工場のセキュリティを強化しなければいけません。
フードディフェンスの実現には、以下のようなシステムの導入が必要とされています。
防犯カメラ、監視カメラシステムの導入は、以下のような効果が期待できます。
防犯カメラや監視カメラは、悪意を持った部外者の侵入や、工場内で働く関係者の犯行を抑止する効果が期待できます。先ほど紹介した群馬県の農薬混入事件などは、製造ラインに設置されていた監視カメラの数が少なく、死角が多くあったため、犯行を未然に防ぐことができなかったと指摘されています。食品に直接触れられる場面全てが「監視されている」となれば、犯行を躊躇する可能性や、犯罪を実行したとしても問題行動を素早く見つけ、出荷前に対処することができます。
この他にも、製造ラインの記録を常に残して置き、後から検証することで、作業効率の改善にも活かせます。
防犯カメラや監視カメラは、存在するだけで犯罪を抑止する一定の効果があるとされています。しかし、主な目的は「犯行の証拠を記録として残す」というもので、事件を未然に防ぐことができない場合も多いです。そこで、食品工場のセキュリティ強化を考えた時の大きなポイントが、入退室管理システムを導入することで、「誰が・いつ」入退室したのかなどの履歴を残せるようにする、権限によって立ち入りできるエリアを区画するなどといった対策です。
入退室管理システムの導入は、以下のような効果が期待できます。
食品工場の安全を考えた時には、やはり部外者の侵入を防ぐ対策を強化することが重要です。入退室管理システムは、IDカードや顔認証などにより、特定の人物の入退室を管理・制限するためのシステムです。これを食品工場に導入すれば、部外者や元従業員などが工場内に侵入することを防止することができ、セキュリティ強化につながります。
また、食品工場は、エリアごとに求められる衛生度や特性が異なります。そのため、従業員が食品工場内を自由に動き回ることができると、交差汚染が原因となる食品事故のリスクが高くなります。入退室管理システムを設置すれば、従業員ごとに移動できるエリアを制限しやすく、工場内の衛生管理をより効率的にできるというメリットも得られます。
さらに、万一の際も、入退室の履歴を記録として残すことができるため、事件の早期解決を図ることができます。
今回は、食品工場において、食の安全を守るためのセキュリティ強化について解説しました。食品工場が、製造する食品の安全性を高めるには、HACCPの導入など、衛生管理体制を強化することが重要視されています。HACCPによる衛生管理は、食品の製造過程で「意図しない」異物の混入などを防ぐことが目的になっているため、悪意のある人間が意図的に引き起こす食品事故を防ぐことはできません。
そのため、食品工場において、製造する食品の安全性をより高めるためには、悪意のある意図的な行動を未然に防げるような対策が必要とされてます。そして、それを実現するためには、記事内でご紹介した「食品防御(フードディフェンス)」という考えに基づいて、食品工場そのもののセキュリティ体制を強化する必要があります。
フードディフェンスの導入を検討する際は、工場のレイアウト変更や小規模な改修工事が必要になることもあります。その際は、食品工場建設・改修の実績豊富なFACTASへご相談ください。ニーズに合わせたご提案で、食品事業の付加価値及び生産性の向上に貢献します。
この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。