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投稿日:2021.07.27 
更新日:2022.10.04 

なぜ食品産業がSDGsに取り組むのか?実際の取り組み事例もご紹介!

今回は、最近よく耳にするようになってきた『SDGs』について、食品産業における実際の取り組み事例を簡単にご紹介していきます。

日本では、少子高齢化や人口減少が深刻な社会問題となっていますが、世界に目を向けてみると、爆発的な人口増加を続けていると言われており、2030年には2015年よりも11.7億人多い85億5千万人に達すると予想されています。こういった爆発的な人口増加は、エネルギーや食糧資源の需給がひっ迫することが問題と言われていますが、それ以外にも地球温暖化などの環境悪化が懸念されています。

そこで、2015年9月に開催された国連サミットで、世界中のリーダーたちによって決められた国際社会共通の目標が「持続可能な開発目標(SDGs)」です。SDGsでは、2030年に向けて世界中の国が共通して解決しなければいけない「経済、社会、環境」の課題を17の目標で示しており、これを達成するには公的機関だけでなく。民間企業や一般市民の参加が必要不可欠だと言われています。
そこでこの記事では、既に実践的に取り組まれている食品事業者によるSDGsの取り組み事例などをご紹介していきます。

※SDGsとは
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
引用:経済産業省特設サイトより

食品産業にとってのSDGsの価値とは?

一般企業がSDGsに取り組もうとした際には、手間や人材リソースなどのコストがかかってしまうものも少なくありません。「必ず行わなければならない!」と言った法的な義務などもありませんし、どの程度SDGsに取り組むのかは企業次第になってきます。一見すると、コストばかりかかってしまう…と考えてしまう方も多いかもしれませんが、SDGsへの取り組みは食品産業の企業にとってメリットが多いのも事実だと言われています。後述で実際の民間企業による取り組みもいくつかご紹介しておきますが、近年では名だたる大手企業が続々とSDGsの活動に参加しています。

食品産業にとってSDGsの分かりやすいメリットとしては、食品ロスの削減やエネルギーの効率化があげられます。これらの活動については、単純に自社のコスト削減が実現するだけでなく、資源の有効活用が地球規模の環境問題への取り組みとなることから、企業イメージアップにも非常に効果的です。自社の取り組み内容を自社サイト内で紹介することで、IRの一環にもつながります。

また、企業全体で取り組んでいけば、社内コミュニケーションを活発にすることも期待できますし、従業員のモチベーションアップなどにもつながる可能性があるでしょう。さらに、SDGsの視点から考案した新たな商品開発やサービスの展開など、新規事業の開拓なども可能になります。こういった取り組みは、今まで接点のなかった他業種のノウハウや技術提供を受けることもでき、企業としての開発力向上が期待できます。
SDGsへの取り組みは、企業にとって新たな価値を生み出す可能性があるという点が大きなメリットになるのではないかと筆者は考えます。なお、農林水産省の公式サイトでは、以下のような価値があると説明されています。

食品産業にとっての価値
1.事業を通してSDGsの達成に近づくことができる(ビジネスの発展)
食品産業は、さまざまな栄養素を含む食品を安定供給することで、SDGsが目指す豊かで健康な社会に貢献できる産業です。
特に高齢化が急速に進む中、人々の健康な生活を支えるためにどのような製品やサービスが必要か、そのために必要なイノベーションは何かを重視し、事業を通じて取り組むべき重点課題として位置づける事例が多く見られます。
また、事業活動で得た知識や技術、インフラを、バリューチェーンの上流(原料生産者)や、下流(消費者・地域社会)に役立て、ともに発展をめざすことも可能です。このことが、原料の安定確保や生産性向上だけでなく、地域社会からの信頼や新たなビジネスパートナー、将来の市場の獲得といった長期的な利益にもつながります。
2.SDGsが達成されないと事業の将来が危ない(リスクの回避)
SDGsは社会が抱えている様々な課題が網羅されており、企業にとっても将来のリスクをチェックする指標として使うことができます。
特に食品産業は、多くの自然資源と人的資源に支えられて成立していることから、SDGsが達成されずに環境と社会が不安定になることが、ビジネス上のリスクに直結しています。
目標13の地球温暖化を例にとれば、気温上昇や自然災害の多発によって食品原料となる農林水産物の生産や、事業所の操業が脅かされています。酷暑によって売り上げが落ちた、労働環境が悪化したという声もよく聞かれます。
また、日本が人口減少と超高齢化社会を迎える中で、継続的に事業の担い手を確保するためには、目標5や目標8、目標10などに関連する多様な人材が活躍できる仕組みとイノベーションが不可欠です。
3.SDGsの達成に貢献できる企業であるか問われている(企業の社会的価値)
消費者、従業員、株主、取引先、自治体などのステークホルダーから「選ばれる企業」となるためには、目指すべき未来であるSDGsへの取組が判断材料のひとつとなります。
特に近年は、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)に配慮している企業を重視・選別して投資を行う「ESG投資」が急成長しています。投資における企業の価値を測る材料としては、これまで主に企業の業績や経営状況などの「財務情報」が使われてきましたが、それに加えて二酸化炭素排出量抑制の取組や、社員のワークライフ・バランスなどの「非財務情報」も用いられるようになります。
また、グローバル企業を中心に、環境負荷の低さや、人権・労働環境などの社会問題への配慮を取引先の選定や購入の基準とする「持続可能な調達」が広がりつつあります。
さらに、日本でも「エシカル(Ethical:倫理的な)消費」という言葉が聞かれるようになってきました。これは、企業がバリューチェーンにおいて環境負荷を抑制し、原材料等の生産者に不当な圧力をかけていないかをチェックし、社会や環境に対して十分配慮された商品やサービスを買い求める動きです。
引用:引用:農林水産省特設ページ

実際の取り組み事例について

それでは、食品産業の企業における実際のSDGsへの取り組みをいくつかご紹介していきましょう。なお、農林水産省の公式サイトで、SDGsへ取り組んでいる企業に対するインタビューなども行っていますので、農林水産省の公式サイトもぜひご確認ください。
ここでは、エネルギー関連の建物的な取り組みを中心にご紹介しておきます。

食品廃棄物からクリーンで持続可能なエネルギー

これは、自らが排出する廃棄物を利用し、再生可能エネルギーを作りだす取り組みです。北海道恵庭市にあるエコロジーテーマガーデン「えこりん村」内に、循環型メタン発酵施設「バイオガスプラント」を稼働。「小樽ビール醸造所」で発生するビール粕を始めとして、各店舗で排出される生ごみ資源を原料として、メタン発酵によりバイオガスを取り出しています。そしてこのバイオガスと店舗や顧客から回収した廃食用油で製造したバイオディーゼル燃料(BDF)を使って発電し、自家利用するという取り組みになっています。
2017年度の実績では、自社部署内の電力について、68.5%を自家発電したクリーエネルギーで賄うことに成功しています。

物流拠点における省エネルギー化推進

国分グループでは、2016年以降、大型物流拠点の冷蔵・冷凍設備に、温室効果ガス制御の観点から自然冷媒を採用しているそうです。自然冷媒は、フロン類よりも熱効率が高く、省エネルギー化も実現しているそうです。さらに、三温地帯(常温・チルド・冷凍)倉庫を1箇所に集約することにより、入荷・配送による輸送エネルギーの削減も取り組んでいるとのことです。
その他にも、外灯などに人感センサー付きLED照明の採用など、多方面からの省エネルギー化に取り組んでいるとのことです。

自家消費型太陽光発電システムの導入

これは、クリーン電力への切り替えという取り組みです。日本アクセスは、CO2削減を目的として、物流施設において自家消費型太陽光発電システムの設置を進めています。当該施設での自家消費はもちろん、発電した電力の内、自家消費しきれない余剰電力については、CO2フリー電力として周辺地域へ供給する取り組みも推進しているそうです。

その他の取り組み事例については、農林水産省SDGs特設ページでご確認ください。

> 農林水産省「SDGs×食品産業

まとめ

食品産業の企業では、SDGsへの取り組みをスタートする企業が多くなっていると言われています。SDGsは世界的な目標となっていますので、一部の国や企業だけで行うのではなく、全ての国と企業、消費者までもが協力して解決を図る必要があるとされています。
もちろん、コストがかかる問題でもありますので、やみくもにスタートするのではなく、「自社で何ができるのか?」「どんな目標を設定すべきか?」ということから検討すると良いのではないでしょうか。

 

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この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。