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食品

投稿日:2021.05.12 
更新日:2022.09.26 

食品をより安全にするための鍵と教訓としたい食中毒事例をご紹介

今回は、食品関連事業者様がおさえておかなければならない食中毒事故について解説していきます。私たちの生活を下支えする食品工場では、非常に厳格な衛生管理体制が整えられています。さらに近年では、さまざまな技術が進化し、人の手が介在しない食品製造の工程も多くなっています。そのため一昔前と比較すれば、食中毒事故のリスクは格段に低くなっていると考えられます。

食品工場などで食中毒事故が発生してしまうと、一夜にして企業存続の危機に瀕することになるため、どの施設でも徹底した食中毒対策を行っていると思います。しかし、21世紀になった現在でも、毎年のように食中毒の事例が報告されており、特にO157やノロウイルスによる食中毒は増加傾向にあると言われています。

そこでこの記事では、改めて食中毒がどういった原因で起こっているのかという事や、過去の食中毒事例をご紹介しておきます。自社の食中毒対策を徹底していく上では、過去の事例を知って学ぶことも重要なはずです。

 

そもそも食中毒の原因は?

食中毒は、下痢や嘔吐などの症状が出るものとイメージする方が多いのですが、実はそれだけでなく、人間の生命まで奪ってしまう可能性を有する非常に危険な病気です。そしてこの食中毒に関しては、高温高湿状態になる夏場に多いというイメージが非常に強いのですが、実は1年を通じて発生するもので、さまざまな食品を取り扱う工場では、常に食中毒に対する注意が必要です。

それでは、人間の命まで奪ってしまう可能性がある食中毒は何が原因で発生しているのでしょうか?まずは、主な食中毒原因からご紹介していきます。
 

食中毒を引き起こす原因について

一口に『食中毒』と言っても、その原因はさまざまなものが存在します。厚生労働省では、食中毒の原因物質の違いによって、「微生物性の食中毒」、「化学性の食中毒」、「自然毒による食中毒」、「その他」と大きく4つに分類しています。

微生物性の食中毒
  • 細菌 <毒素型>:黄色ブドウ球菌など <感染型>:サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクターなど
  • ウイルス ノロウイルス、A型肝炎ウイルスなど
化学性の食中毒 ヒスタミン、農薬、重金属など
自然毒の食中毒 キノコ、山菜などの植物性、ふぐ毒、貝毒などの動物性
その他食中毒 寄生虫・原虫:アニサキス、クリプトスポリジウムなど

このように、食中毒と言っても多種多様な原因が存在します。

それでは、日本国内において、食中毒事故がどの程度発生しているのかもご紹介しておきましょう。厚生労働省が公表した「令和2年食中毒発生状況」によると、2020年度の食中毒発生件数は887件と、過去5年間では最も少ない数字になっています。ただしこの結果は、新型コロナウイルスの影響により、飲食店での休業要請や営業時間の短縮が行われたというのが大きく関係していると考えられます。

そして、食中毒を原因別にみてみると、以下のようなグラフになっています。

引用:厚生労働省「令和2年食中毒発生状況」より
食中毒の主な原因に関しては「細菌・ウイルス・寄生虫」が例年上位3項目になっています。ただし、年度ごとに最上位となる原因は変動するため、特定の傾向はないと考えられています。
2020年に関しては、新型コロナウイルスの影響で、日本国内の社会生活が大きく変化していたことから、食中毒の原因物質についても例年にない様相を見せています。例えば、細菌性の食中毒件数が273件と過去最少の件数となっており、ここ5年間の平均値410.8件と比較しても、約34%も発生件数が減少しています。さらに、ウイルス性食中毒に関しても、過去最少の101件という結果で、ここ5年間の平均値からは約57%の減少だったそうです。
その一方で、寄生虫による食中毒の発生件数が非常に多く、2018年に記録した過去最大の487件に次ぐ395件という結果でした。これは、平均値から比較しても約18%増加しています。

参考データ:厚生労働省「令和2年食中毒発生状況」より

 

過去の食中毒事例について

それでは、日本国内で過去に発生した大規模な食中毒事例をいくつかご紹介しておきます。

 

牛乳集団食中毒事件

食中毒事件の中でも非常に有名な事例となるのが、2000年に起きた牛乳集団食中毒事件です。
この食中毒事故は、日本国内でも一流の大企業が食中毒事故を起こしたということに加え、被害者が総勢15000人近くにも及ぶなど、非常に多かったことで有名です。食中毒事故の主な原因は、北海道にある工場で、氷柱が落下したことにより停電が起き、それによって冷却装置が停止して脱脂乳中で黄色ブドウ球菌が増殖⇒毒素が発生した…というものです。
さらに、この食中毒事故では、企業の対応の遅さで被害が拡大したと言われています。というのも、6月25日に大阪工場で製造された低脂肪乳を飲んだ子供が食中毒を発症しています。そして、6月27日には大阪市保健所が市内の病院から食中毒の疑いの報告を受けているのですが、この時には各方面から食中毒の報告があがっていたそうです。しかし当該企業の大阪工場の対応が遅れてしまい、製品回収の開始をしたのは6月30日になってからだそうです。この対応の遅さで、食中毒被害者が爆発的に増えてしまい、中には入院に至った重傷者も出ています。

参考:厚生労働省最終報告データ

 

O157集団食中毒事件(白菜漬け)

これは、2012年8月に札幌市などで発生した食中毒事故で、腸管出血性大腸菌O157が原因となる食中毒が発生し、患者数169名、死者8名を数えた事故となっています。食中毒被害者の多くは高齢者施設であったのですが、スーパーやホテル、飲食店などでも流通しており、スーパーで購入した白菜漬けを食べた4歳女児が死亡したという事例もありました。さらに、食中毒発生時は観光シーズンだったこともあり、北海道外の自治体でも患者が確認された事件となりました。

この食中毒事故に関しては、感染経路の特定はされていませんが、

  • 殺菌前後の原材料を取り扱う区域の区分が不十分
  • 殺菌液の使い回しにより溶液濃度が低下していた
  • 原材料の殺菌時に溶液濃度の調整を目分量でおこなっていた

など、原材料の洗浄や殺菌が不十分だったことが判明しています。他にも、樽やフタなどの殺菌が不徹底だった…、床に直置きしたホースから原材料へ給水していたなど、製造施設において、設備の管理不備が多く報告されています。

参考:国立感染症研究所より
 

 

まとめ

今回は、食品関連事業者が教訓にしたい、食中毒事故の事例などをご紹介してきました。食中毒は、夏場に発生するものというイメージを持っている方が多いのですが、この記事でご紹介したように、さまざまな原因物質が存在しており、1年中注意が欠かせないものと考えましょう。

なお、食品等事業者の衛生管理に関する情報は、厚生労働省の公式サイト内でまとめられていますので、小まめに確認しておくことがオススメです。

>食品等事業者の衛生管理に関する情報

この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。