食品
投稿日:2021.04.14
更新日:2024.01.26
今回は、食品工場などにおいて、食中毒事故を防ぐためにおさえておきたい『交差汚染』の基礎知識についてご紹介していきたいと思います。
食中毒予防では、病原菌を「付けない」「増やさない」「排除する」ということが大原則とされており、さまざまな食品を取り扱う食品工場では、非常に厳格な衛生管理体制が整えられています。特に、HACCPによる衛生管理が制度化されたこともあり、より高レベルな衛生管理体制が整えられるよう、建物自体の改修工事に踏み切っているような企業も少なくありません。
しかし、HACCPを前提とした食品工場を造ったとしても、実際に食品を取り扱う従業員の意識が低ければ、食中毒事故の発生確率を下げることができません。例えば、調理や盛り付けの過程において、人為的ミスにより食品に病原菌が付着してしまうなんてことも考えられます。こういった事象が『交差汚染』と呼ばれるのですが、交差汚染を起こさないためには何に注意しておけば良いのでしょうか?
この記事では、そもそも交差汚染がどういったものなのかや、交差汚染を防ぐための注意点をご紹介します。
それではまず、そもそも交差汚染がどのようなものなのかをご紹介しておきましょう。
交差汚染とは、病原菌の汚染度が高いものが、汚染度の低いものに接触することによって汚染が広がることを指しています。既に加熱した食品や本来そのまま食べても問題ないような食品で発生する食中毒は、この交差汚染が原因になることが多いと言われています。
それでは、こういった交差汚染はどのようなことが原因で起こるのでしょうか?以下で交差汚染が起こるいくつかのパターンをご紹介しておきます。
まずは食品工場内で働く従業員などが原因となる交差汚染です。例えば、加熱前の原材料に触れた従業員が、加熱後の製品に触れることで汚染してしまうというパターンが考えられます。せっかく加熱滅菌したのにも関わらず、細菌が付着した手で触れる、衣服などが触れてしまう…なんてことになれば意味がありません。また、注意が必要なのは、細菌が付着している人と付着していない人が接触することで、汚染が広がる場合もあります。
こういった人が原因となる交差汚染を防ぐには、工場内の工程や作業の見直しが必要です。例えば、清潔度に応じて区画して、人の動線が交差しないように整理しなければいけません。機械の配置なども、人の交差が無いようにしましょう。
さらに、作業工程の中で、汚れているモノに触れた手指、着衣などは、洗浄、消毒あるいは着替えるといった作業を挟むことで、交差汚染を防止することが可能になります。
交差汚染は、食品自体が原因となる場合もあります。例えば、生鮮食品の貯蔵・調理・陳列時などに、生の原材料や中間製品から調理済み食品に汚染してしまうことが考えられます。飲食店などでも多いと言われている交差汚染は、冷蔵庫内に食品を保管する際、上の段から下の段の食材にドリップが落ちてしまい、汚染されてしまうというケースです。
食品や原材料が原因となる交差汚染を防ぐには、保管庫や冷蔵庫などで食品を保管する場合、あらかじめ食材ごとに保管場所を決めておくという方法が良いでしょう。また、ドリップなどが考えられる食材については、下段に保管する、専用の容器を用いるなどの工夫が必要です。
調理を行う際のまな板や包丁、布巾などが原因となる交差汚染も多いです。例えば、肉や魚など切った包丁やまな板で、野菜などを切ってしまうと、非常に危険だということがわかると思います。一般家庭などでは、こういった調理器具などから交差汚染が起こり、食中毒に発展する…という場合が非常に多いと思います。
食品の下処理を行う調理器具については、肉類、魚介類、野菜類など、それぞれ専用の器具を使い分けるようにしなければいけません。また、何に使う器具なのかが一目でわかるように、色や形などを変えて使い分けるようにしておけば間違いもなく安心でしょう。なお、加熱前と加熱後で同じ機械・器具を使用する場合は、十分な洗浄と殺菌が必須と考えてください。
最後は、施設自体が原因となる交差汚染です。食品を取り扱う施設では、施設内での空気の流れや床などから交差汚染が起こり得ると考えなければいけません。例えば、汚染区域からの空気が、清潔であるはずの区域に流れ込んだり、汚れた水が跳ねてしまい、加熱後の食品を汚染してしまう…などと言った事が考えられます。
食品工場などの施設では、清潔度に応じた区画を行うことが非常に重要です。また、床からの跳ね水を防ぐには、作業台を床面から80cm以上の高さを確保するようにしましょう。なお、何らかの事情で、高さが確保できない場合、跳ね水がかからないようにするために、覆いをする、水が跳ね上がらない製造環境を作るなどの対策を行いましょう。
今回は、食品工場などの食中毒事故の原因となってしまう交差汚染の基礎知識についてご紹介してきました。交差汚染は、病原菌の汚染度が高いものが、汚染度の低いものに接触することで汚染が広がってしまうことを指しています。
この記事でご紹介したように、交差汚染を引き起こしてしまうポイントはたくさんあるのですが、それぞれの原因は従業員のちょっとした意識で防ぐことができるものばかりだと思います。まずは、交差汚染を引き起こしてしまう『コト』や『モノ』を見つけ、その可能性を排除していくための対策を行っていきましょう。
この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。