建築
投稿日:2021.03.20
更新日:2024.10.29
2018年6月に可決された改正食品衛生法案で、2020年6月(猶予は2021年6月までの1年)までに『原則全ての食品等事業者はHACCPに沿った衛生管理に取組むこと』と、HACCP基準の衛生管理が制度化されることとなっています。日本国内では、平成7年の食品衛生法改正の際、HACCPの考えに基づいた『総合衛生管理製造過程』と呼ばれる承認制度がスタートしています。しかし、現在では世界中でHACCP基準の衛生管理が義務化される流れになってきたことから、その流れに従って日本でも「HACCPに沿った衛生管理」の制度化が決定しました。 そこでこの記事では、簡単な認証ランクにおける分類とHACCP対応を目的として、食品工場の改修を検討した場合のポイントについてご紹介していきたいと思います。
Contents
それではまず、「そもそもHACCPとは何か?」という基礎知識を簡単にご紹介しておきましょう。食品工場など、食品関連事業者であれば、既にご存知の知識かもしれませんが、改めて解説します。 現在世界中で義務化の流れになっていると言われている『HACCP(ハサップ)』ですが、これは「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critica(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の頭文字を取った造語となります。日本語に直訳すると「危害分析重要管理点」となりますが、本来の意味からすると「危険度分析による衛生管理」と理解して頂ければ良いでしょう。 このHACCPによる衛生管理手法は、もともとアメリカのNASAにおいて「宇宙食の安全性を確保するため」に考案されたもので、安全な食品製造のための究極の衛生管理システムとも言われています。日本国内では、平成7年の食品衛生法改正の際に、「総合衛生管理製造過程」というHACCPの承認制度が導入され、法的に定められた基準により製造するか、HACCPにより製造するかを選択することになっていました。そして、2018年6月の改正食品衛生法案で、『原則全ての食品等事業者はHACCPに沿った衛生管理に取組むこと』とHACCPによる衛生管理が制度化されたことから、HACCP対応を目的とした食品工場の改修を検討する企業が増えています。
HACCPと一言で言っても、認証ランクがいくつかあり取り扱う食品の特性に応じた衛生管理を行う事が求められます。 新規で食品工場を建設する場合には、設計段階から「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を念頭に入れ取引先の求める基準に沿った認証の取得に備えた対応が重要になります。よってまずは取引先が求める基準を明確にする事で各認証の取得を見据えた準備を行なうことができます。 しかし、すでにさまざまな食品を取り扱う既存の食品工場では、自社工場のHACCPに沿った対応が急がれています。その際に「どこから手をつければ良いのか分からない…」という事業者様も少なく無いのではないでしょうか? まずは自社で下記のどの認証を取得するのかを明確にする事から始める必要があります。それぞれ番号順に難易度が高くなりますが、どこをターゲットにするのかを明確にしましょう
それでは、HACCP対応を目的として、食品工場の改修を行う場合のポイントをいくつかご紹介しておきましょう。弊社では、さまざまな食品工場の建設事業に取組むことで蓄積されたノウハウを駆使し、お客様のニーズに合わせた完全オーダーメイドの食品工場・食品関連施設をご提供しています。食品関連施設では、厳しい衛生基準を守らなければいけません。ここでは、食品工場での危害発生ポイントに合わせた改修案をご紹介しておきます。
食品工場内に虫の侵入があった場合、異物混入の原因となります。こういった虫は、窓や出入り口などに防虫対策を施すことは当たり前として、側溝、空調機器、建物の隙間、床のクラック、原料、従業員に付着することを防ぐなど、さまざまな対策で防止が必要とります。
対策例
食品関連施設での虫の侵入は、出入りをしている人や原料に付着して…という原因が最も多いと言われています。このような侵入経路に関しての侵入源を無くす事が必要です。 一般的な対策は下記のとおりです。
等が考えられますが、その他にも商品も含めてのエアシャワーやサニタリー室を設置等の対策で直接衛生度の高いエリアに入らない対策が重要です。また、窓や排水路から侵入してくる虫は、極力窓を無くし発生源や侵入源を無くすことが有効です。なお、建物の経年劣化による隙間やクラックなども虫の侵入経路となってしまうため、経年劣化の少ない材料やクラックが発生しにくい材料の使用、定期的なメンテナンスが有効です。
食品の製造環境自体が異物混入の原因となる場合もあります。例えば、壁材や床材、天井材などが経年劣化や台車の衝突で破損してしまい、その破片が混入してしまう…、製造機械や調理器具の部品や破片が異物として混入してしまうという事故は少なくありません。
対策例
壁材や床材、天井材などが劣化してしまい、その破片などが異物として混入してしまう…という事故を防ぐためには、剥がれや割れが発生しにくい材料を使用して改修を進めるのがオススメです。なお、製造器具などの破片が混入する事故も多いので、日常的な点検を欠かさないようにしましょう。
食品関連施設では、ホコリや毛髪の対処も非常に大切です。虫と同じく、材料や施設で働く人に付着して侵入するゴミも当然ですが従業員の毛髪も大きな要因となる事が多いのですが、他にも窓や空調機器、建物の存在する隙間などが大きな要因となります。
対策例
人や原材料に付着するホコリやゴミについては、虫の侵入防止と同じく、毛髪も大きな問題となります。対策としてはエアシャワーやサニタリー室を設けて粘着ローラーで防止するのが有効ですが、他にも持ち込み残置された際に食品に混入される物は原則禁止とするといったルール作りも重要とりますのでハード面と並行しソフト面についても十分な仕組みづくりが必要でHACCPの考えに沿った対策を講じて行きましょう。その他に空調機器の経年劣化などが原因となり場内にカビを拡散しない様に小まめに清掃し場合によっては、より細かいフィルターに対応した空調機器に交換するなどもオススメです。
今回は、HACCPに沿った対応を目的とした食品工場の改修について、事業者様がおさえておきたいポイントについてご紹介してきました。この記事でもご紹介したように、世界中で義務化の流れとなっているHACCPの考え方ですが、日本国内でも全ての食品関連事業者様は『HACCPに沿った衛生管理』に取組むことが制度化されることになっています。 HACCPと一言で言っても、認証ランクがいくつかあり取り扱う食品の特性に応じた衛生管理を行う事が求められます。取得が必要な認証レベルが明確になり、自社の食品関連施設においてHACCP対応を目的とした改修工事を検討しているという事業者様は、ぜひ弊社までお問い合わせください。 食品工場の設計から建設まで多くの実績を持つプロフェッショナルが迅速に最適なご提案をいたします。
【関連記事】
フードディフェンスの重要性と基本的な考え方
この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。