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投稿日:2020.06.27 
更新日:2024.10.29 

HACCP制度化はもうすぐそこ!HACCP対応の食品工場を建築する際の注意点や基準とは?

世界中で『食の安全』が叫ばれるようになっていますが、日本国内でも2020年6月より改正食品衛生法が施行されHACCP基準の衛生管理が制度化されました。改正食品衛生法では、2020年6月まで(猶予は1年)に『原則全ての食品等事業者はHACCPに沿った衛生管理に取組むこと』と決められていますので、さまざまな食品を取り扱う食品工場ではHACCPへの対応が急がれていることでしょう。

HACCPによる衛生管理では、食の安全を維持するため、食品の製造工程における危険要因(ハザード)を分析・把握し、これらを適切に管理することが求められます。したがって、HACCPの制度化が決定して以降、食品工場などでは設計段階からHACCPのことを考えておくことが重要になっているのです。あらかじめHACCPを念頭において施設の建設を進めていくことで、効率よくHACCPの導入が可能になるのです。
そこでこの記事では、HACCP対応の食品工場を建設する際に注意しておきたいポイントを簡単にご紹介しておきます。
参考記事:HACCP制度化が可決したけど…結局、今後はどうすればいいの?
 

HACCPとは?

HACCPは、2018年6月に制度化が決定したものですので、食品を取り扱う施設で勤務している方であれば、一度は耳にしたことがある言葉だと思います。何らかの食品を取り扱う施設であれば、もともと厳格な衛生管理のもと作業を進めていたと思うのですが、世界的にHACCP基準の衛生管理が義務化されていく傾向にある中で、日本の食の安全をアピールするために日本でも制度化されることが決まったのです。
それでは、HACCPによる衛生管理とはどのようなものなのでしょうか?厚生労働省の公式サイトでわかりやすく紹介されていたため以下に引用しておきます。
 

Hazard Analysis and Critical Control Point
HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。
この手法は 国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会から発表され,各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。

HACCP方式と従来の製造方法の違いは
従来の抜取検査による衛生管理に比べ、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能となるとともに、原因の追及を容易にすることが可能となるものです。
HACCPを導入した施設においては、必要な教育・訓練を受けた従業員によって、定められた手順や方法が日常の製造過程において遵守されることが 不可欠です。

HACCP対応の食品工場を建設する際の注意点

それでは、HACCP対応の食品工場建設を検討した際に注意しておきたいポイントをいくつかご紹介していきましょう。

 

立地や周辺環境の注意点

まず注意しておきたいのは、工場建設予定地の周辺環境や立地です。それなりの広さが必要になることから、敷地面積なども気にしなければいけないのですが、衛生面を考えると周辺にどのような施設が存在するのかもチェックしておく必要があります。例えば、予定地の周辺に多くの飲食店が存在するなどと言った場合、ネズミや害虫なども多く存在すると予想できます。したがって、こういった条件の場所に工場を建設する場合、ネズミや害虫が施設内に入り込まないようにさまざまな対策が必要になります。
立地や周辺環境に関しては以下のような点をチェックしておきましょう。

  • 周辺に煙や塵埃を発生させる施設がないか?
  • ネズミや害虫の発生源となる施設はないか?
  • 周辺に昆虫が繁殖する樹木が無いか?
  • 周辺環境の衛生状態は良好か?
  • 排水や廃棄に不便な立地ではないか?

こういったポイントを注意しておくことで、防虫対策などへの設備投資を最低限にすることができ、建設コストを抑えることが可能となるでしょう。なお、工場建設時は、土地の高低差や周辺の風向きなどにも注意を払う必要があります。例えば、常に工場に向けて風が吹いている…などと言った立地の場合、大量の塵埃が施設内に飛来することとなってしまいますので、それ相応の対策が必要になります。

 

事業用地の紹介・HACCPシステム導入計画などのトータルプロデュースについてはこちら

 

 

ゾーニングと動線

HACCP対応の食品工場を建設する場合、ゾーニングや動線計画が非常に重要です。食品工場には、さまざまな設備が導入されるのですが、「どのような設備を導入するのか?」と同じぐらい「どこに配置するのか?」ということも大切になるのです。
例えば、作業者が仕事を始める際、『更衣室で着替える⇒エアシャワーでゴミを落とす⇒作業に従事する』というような業務フローをイメージしたとすれば、どういった設備の配置が良いでしょうか?最も効率的で衛生面の強化ができるのは、更衣室の後にエアシャワーを設置して作業場に入れるような施設構造にすることでしょう。
このように、施設の設計段階から業務フローをイメージして設備の配置を決めるというのが非常に重要なのです。そうすれば、不要な設備を増やさなくて済みますし、設備の導入にかかるコストも少なく済むでしょう。他にも以下のような点に注意しておきましょう。

  • 作業者の作業動線を意識した構造を考える。
  • 害虫や塵埃の飛来など、外部環境のハザードの対応も考える。
  • 床の材質や排水のための勾配など、清掃のしやすい施設を心がける。
  • 将来的なレイアウト変更に対応できるような構造を考えておく。

 

ゾーニング・動線計画に優れた工場・倉庫のケーススタディはこちら

ゾーニングとは?食品工場におけるゾーニングの意味と重要性について解説

 

 

その他の注意点

HACCP対応の食品工場を建設する場合には、他にもたくさんの注意ポイントが存在します。特に、トイレやドアノブなど、一般設備が汚染原因となる場合もありますので、以下のような点に注意しましょう。

  • 作業場から直接トイレに出入りできない構造にする。
  • 手洗い設備は、自動水栓や足踏み式など、直接手で触れなくても良い構造にする。
  • 作業場に入る際には、必ず長靴の殺菌槽を通過するような構造にする。
  • 作業場の入り口は、自動ドアなどドアノブに触れなくても開閉するものにする。
  • 埋め込み式の照明を導入するなど、ホコリが溜まる場所を少なくする。
  • できるだけ清掃がしやすい構造を心がける。 etc

 

まとめ

今回は、HACCPを念頭に置いて食品工場を建設する場合の注意点についてご紹介しました。いよいよ制度化がスタートしたHACCPですが、HACCPによる衛生管理を徹底するためには非常に多岐にわたる注意点が存在するのです。「HACCPによる衛生管理を導入する」と口で言うのは簡単ですが、そもそも施設の構造や設備が整っていないのであれば、いくら作業者に衛生管理教育を施したとしても、その通りに作業を進めるのは難しくなってしまいます。

したがって、さまざまな食品を取り扱い、多くの人員が同時に作業することとなる食品工場などでは、設計段階からHACCPを意識しておくことが重要だと覚えておきましょう。

 

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この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。

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