工場
投稿日:2023.10.10
更新日:2024.09.24
工場の建設を検討しているものの、どのような流れで進めていくべきか、基本的な部分が分からないという方もいると思います。
そこで当記事では、基本的な工場建設の流れや各工程の確認ポイントなどを解説します。なお、記事内では、工場の建設に関係する法律や、活用できる可能性がある補助金・助成金の情報についても簡単にご紹介します。
Contents
それでは、工場を建設する際の一般的な流れをご紹介します。ここでは、各工程で確認すべき注意点についても簡単にご紹介します。
工場の建設は、目的を明確にすることが重要です。例えば、「現在使っている工場が老朽化しているから…」「事業を拡張するため生産量を増やす必要があるから…」「既存工場の生産ラインに課題があるから…」など、なぜ新しい工場を建設する必要があるかをはっきりさせましょう。
工場の建設は、基本計画フェーズで設定する目的に沿って全てが進められます。工場が完成し、稼働してから「生産ラインの課題が解決できていなかった…」となっても、その原因によっては改善することが難しいケースもあります。また、途中で設計変更が必要になった場合、予想外のコストが発生したり、スケジュールの遅延が発生する可能性があるため、初期段階で工場建設の明確な目的を設定することが重要です。
工場の基本計画が完成したら、できるだけ早い段階で建設会社の選定を行いましょう。この際、建設会社選定は、見積り金額に注目しがちですが、価格だけでなく過去の施工実績や工場完成後のメンテナンスなども含めて、信頼できる建設会社を選ぶことが重要です。
工場の建設は、一般住宅の建設と異なり、工場立地法や都市計画法など、数多くの法令に適合させなければいけません。工場建設に関わる法律に精通し、豊富な実績を保有している知見がある建設会社を選びましょう。建設会社を選ぶときのポイントは、別のページで詳しく解説しているので、以下のページも確認してください。
> 建設会社の選び方
STEP1の基本計画に基づいて、設計方針や大まかな基本設計を立案します。例えば、工場の構造図やレイアウト図、工場内で働くスタッフの動線設計図、機器仕様書、機器構成図などの作成を行います。
既存の工場がある場合、基本設計の際は、現在のワークフローやスタッフの動線を把握し、より働きやすくするためにはどうすれば良いのかも踏まえて設計する必要があります。工場の生産性を最大化し、スタッフが働きやすい工場にするためには、この基本設計が重要なステップになります。
実施設計は、前工程で作成した基本設計に沿って、より具体的な設計を行うステップです。建築設計図を始めとして、機械の詳細配置図や配管図、配線図などを作成します。また、電気の必要量や照明、換気、空調などの各種設備、工場稼働に必要な給水・排水容量など、細部まで詳細を決めていきます。
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工場の詳細な設計が完成したら、建設資材や機材、部材の手配を行い、どのタイミングでどこにどれくらい納入するのかといった計画を立てていきます。部材の納入計画は、工事進捗にも関係しますので、綿密な納入指示だけでなく、計画通り進んでいるのかをチェックできる体制についても定めておきましょう。また、将来的に交換することも想定し、搬出入が可能かどうかも考慮する必要があります。
上記の計画や設計ができれば、建設工事が開始できます。しかし、工場の建設はここがゴールではなく、建設工事をスムーズに進めるための工程管理が重要です。工場のような大規模施設の建設においては、少し工程が遅れただけで、大きな損害につながります。したがって、工事の工程管理は、業者任せにするのではなく、発注者側もしっかりと現状を把握するようにし、遅れが生じた時に迅速に対応できる体制を作っておくことが大切です。
建設工事が完了すると、特定の行政機関が検査を行います。この検査で問題がなければ、工場の使用が許可されます。官庁による検査は、建築物や設備機器、消火・防火設備、配管など様々な項目を審査します。一般的に、以下のような点がチェックされます。
建設工事が完了すれば、官公庁検査が行われ、この検査で問題がないことが認められてはじめて、工場の使用許可が下り、工場の稼働が可能となります。
検査で問題なければ、工場の使用が可能になります。稼働前に、設備や機器のテストを実施し、故障や問題がないことを確認することが大切です。問題が見つかった場合、将来の運用に影響を及ぼす可能性があるため解決できるまで調整と改善が必要です。試運転で問題がなければ、施工業者からマニュアルや図面を受け取り、工事が完了します。
工場建設の一般的な流れと各工程での注意点を見てきましたが、ここでは発注者にとって非常に重要な基本計画時のポイントについて説明します。基本計画段階でポイントを押さえた検討をすることが納得のいく工場建設につながります。具体的には、次の5つのポイントがあります。
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事業の拡大、新規事業の開始、既存工場の老朽化、増産ニーズなど、目的や理由はさまざまであるため、まずは、新工場建設の目的や背景を明確にすることが重要です。
次に、新工場が事業全体でどのような位置づけかを明確にします。社会の変化や市場の動向を考慮して、将来の需要を予想した上で、新工場で生産される製品が主力商品なのか、将来的に主力商品とするのか、一時的な需要に対応するためであるかを考慮します。
これによって、新工場で同じ製品を継続生産するか、将来変更が必要になる可能性があるかが明確になります。これは工場の設計や運用方針を決定する上で重要な指針となります。
工場建設時に無理に建築費を抑えると、後になってランニングコストや人件費などが増えることがあるため注意が必要です。計画や設計段階では、稼働後のコスト計算が後回しにされがちで、概算だけで満足してしまうことがあります。しかし、工場は将来の利益を考えて建設するものであり、長期的な利益を生み出すためにはランニングコストを含めた試算が不可欠です。
設備の機能やスペックによって建築における設備費が異なります。設備ごとにそれぞれの稼働条件に応じたランニングコストを算出し、イニシャルコストとの合計で最も利益が見込める組み合わせを見つけることが重要です。
また、設備の違いによって生産性に差が生じる場合があります。製造機械の違いなども含めて、生産性の差を考慮して検討することも大切です。
製造する製品によりますが、労働環境には温度やにおいなどに配慮する必要があります。また、労働環境には休憩場所や社員食堂などのアメニティも含まれ、これらは社員のモチベーションや生産性に影響を与えることがあります。
労働環境が厳しいと、人員確保が難しくなり人件費が上がります。労働環境は設備やランニングコストにも関係し、昨今の労働力不足の状況においては、労働環境の整備が人員確保のために重要な要素となっています。
建築物はさまざまな法律で規制されているため、関連する法律の確認が非常に重要です。法律を遵守し、規制の範囲内で計画を進める必要があります。
ほとんどの建設会社は、計画や設計段階で関連する法律を確認します。関連する法律の例としては、「工場立地法」「都市計画法」「建築基準法」があります。この後、見出し「工場建設に関係する法律」で詳しく説明します。
法令遵守は前提ですが、工場の性能・品質と建築費用とのバランスで仕様や設備のグレードを決定します。
まず、工場の設備や仕様・性能について、妥協できない部分と妥協できる部分の優先順位を設定します。この選択は他の条件とも絡むことがありますが、条件を明確にします。
また、ランニングコストや稼働後の収支も重要です。工場の稼働率に応じた売上など、コストと利益のバランスも考慮します。
これらを踏まえて、見積もりを取得して検討しましょう。
工場建設をする際、工事の依頼主として後悔しないスケジュールにするためには、以下のポイントを押さえた上で決めることをおすすめします。
工場建設会社に相談する前に、自社の計画と要望を明確にしておきましょう。プロジェクトのどこかの段階で必ず機能や費用など何を優先すべきか判断に迫られるタイミングがあります。工場や倉庫の建設に当たり、目的や要望はパートナーとする建設会社に忖度せずに伝えましょう。
工場建設には様々な補助金がありますが、申請時期や条件が定められています。補助金を利用する場合は、申請時期や条件を確認し、工場・倉庫建設のスケジュールを計画してください。
設計や見積を進めるにあたり、いずれかのタイミングで必ず費用を削減させたいと考えるでしょう。ただし、単純に費用を削減するには規模縮小か仕様を下げるかの2択となります。規模を縮小することで生産能力が低下する、仕様を下げることで作業がしにくい環境になる、メンテナンスに費用がかかるなど、デメリットも発生します。
そこで希望とする規模や機能を優先するのか、費用を優先させるかを判断するために、当プロジェクトの目的を明確にしておく必要があります。
工場新築ではなく、増築の際には、生産が一時停止することもあります。その生産停止のタイミングから逆算して準備を行うことで、生産性の低下を回避しましょう。
ここでは、工場を建設する際の注意点について解説します。
工場建設においては、近隣住民の理解を得ることが非常に重要です。工場の立地に関する法律(工場立地法、建築基準法、都市計画法)を遵守することは大前提ですが、それだけでは住民の支持を得られるとは限りません。
工場の性質上、騒音や振動、異臭などの問題が発生する可能性があり、これらが近隣住民の不安を引き起こすことがあります。近隣住民の懸念を無視すると、賠償請求や立ち退き要求などのトラブルに発展するリスクがあります。
長期的に事業を続けていくことを考えると、近隣住民とのトラブルは避けたほうがいいです。そのため、工場建設時には住民向けの説明会を開催や、対話を重ねて理解を得るための努力が求められます。
工場の建材や設備を選定する場合は、初期の費用だけでなく、運用コストやメンテナンスの容易さも考慮して検討することが重要です。
工場は単に建設が完了すれば終わりではなく、むしろ重要なのは稼働後のランニングコストや、補修や交換が必要になった場合に同じ機材や部品が入手できるかといった点です。
メンテナンスがしやすく、同時に運用コストも削減できるような設計をすることで、将来的にかかるコストを抑えます。
設計会社を選定する際は、信頼できる会社を選ぶことが大切です。
そのうえで、専門的な知識(特に法律の面での高度な専門知識)、技術面での知識(例えば現場を把握しているか)なども持ち合わせていることが重要です。
また、食品工場の建設・改修の際に生じる課題については、食品工場コンサルティングに相談することもおすすめです。以下の記事では食品工場コンサルティングの流れについて詳しく説明しております。ぜひご参考にしてください。
食品工場コンサルティングとは?重要性とコンサルティングの流れを紹介
工場の建設は、さまざまな法律の基準をクリアしなければいけません。ここでは、工場の建設に関わる主な法律の特徴を簡単に解説します。
工場立地法は、工場建設時に「敷地内に緑地などを整備し、周辺環境を保護する」ことを義務付けた法律です。この法律は、高度経済成長期真っ只中の1973年に制定されたのですが、その理由は、日本国内で急速に工業化が進んだことで、「水俣病」や「イタイイタイ病」、「四日市ぜんそく」などの工業病の発生やさまざまな環境問題が表面化したためです。経済の発展と福祉の向上を両立させるため、工場立地法によりさまざまな規制が設けられています。
例えば、敷地面積や建築面積が一定以上の大規模な工場を建設する場合、敷地内に一定面積以上の緑地を設けなければならないなどの規定が作られています。
日本では、都市計画法により、まちづくりのルールが定められています。都市計画法は、次のような目的で制定されています。
「都市計画法」は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることで、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、それによって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的としている。
引用:国土交通省資料より
都市計画法では、土地が属する地域によって、建てられる建物と建てられない建物が決められています。つまり、いくら自社にとってメリットの高い工場用地が見つかったとしても、立地によっては工場を建てられない場合があります。
都市計画法は、日本の国土を「都市計画区域」と「準都市計画区域」に分類していて、さらに都市計画区域は、「市街化区域」と「それ以外の区域(市街化調整区域など)」に分類されています。工場が建設できるエリアは、この中でも市街化区域のみと決まっています。また、市街化区域も、土地利用の観点から、13の用途地域に分類されており、工場の建設に適した用途地域は、準工業地域、工業地域、工業専用地域となります。
建築基準法は、工場の建設に限らず、全ての建物に適用される法律です。建築基準法は、無秩序な建物の建築を防ぐために作られた法律で、建物の建蔽(けんぺい)率や容積率、建物高さなど、最低限のルールが定められています。日本国内では、どのような建物であっても、この法律に則って建てられることになっており、工場の建設においては、建築基準法に従って審査・検査を受ける必要があります。なお、検査は、次の3段階にて行われます。
工場の建設時には、上記以外の法令が関わってくる場合があります。例えば、製造過程で騒音や振動を発生させる可能性がある場合、「騒音規制法」や「振動規制法」が定める基準を守る必要があります。この他にも、大気汚染防止法や水質汚濁防止法、悪臭防止法など、工場の種類によって関係する法令が異なります。
工場の建設は、関連する法令に精通した専門家の知見に頼るためにも、同じ種類の工場の施工実績を豊富に持っている業者を選定することがおすすめです。
今回は、一般的な工場建設の流れと、工場建設に関連する法律や補助金制度などについて解説しました。工場の建設は、さまざまな法律への対応が必要になり、工場完成後に法に適合していないことがわかれば、工場が操業できないなど、最悪の事態に発展します。
工場建設を成功させるためには、何よりも施工を依頼する建設会社選定が重要で、工場建設の経験が豊富、かつ各種法律の知識も備えた安心できる建設会社を選ぶことをおすすめします。
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この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。