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工場

投稿日:2025.03.21 

食品工場の建設を行う際に押さえておくべき建築条例・法律の手続きについて

食品工場

食品工場は、安全な食品を製造するために、様々な法律や条例によって厳しく規制されています。これらの規制を遵守せずに建設を進めると、完成後に工場の稼働が遅れたり、最悪の場合、稼働できなくなる可能性もあります。

そこで当記事では、食品工場の建設を行う際、工場の建設計画に関連する代表的な法律について紹介します。

 

食品工場建設時に重要な法令について

食品工場の建設計画を進める際に、重要な法律や条例について解説します。食品工場は、安全な『食』を提供するため、さまざまな法律や条例が定めているルールや基準に則った建設計画が必要です。ここでは代表的な6つをご紹介します。
 

工場立地法

まずは工場立地法です。

この法律は、大規模な工場の建設を行う場合に、敷地面積に対する生産施設の面積と緑地の割合を定める法律です。工場立地法は、工場の存在による環境破壊や公害を防ぎ、周辺の住民や従業員の生活環境を守る目的で制定されています。

なお、工場立地法では、以下の2つの要件を満たす工場を特定工場とし、新設・増設を行う時には着工の90日前までに該当市町村長への届出が必要と定めています。
 

  • 業種:製造業、電気・ガス・熱供給業(水力、地熱及び太陽光発電所は除く)
  • 規模:敷地面積 9,000㎡以上 又は 建築面積 3,000㎡以上

 
基本的に、届出の90日後までは着工できないため、工事日程などに注意が必要です。

こちらで、食品工場の土地購入時に留意すべき確認ポイントを詳しく解説しています。
 

都市計画法

工場の建設には都市計画法が大きく関わってきます。都市計画法は、以下の目的で制定された法律です。
 
(目的)
第一条 この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
引用:国土交通省 都市計画法より
 
都市計画法は、個人や事業者が自由に建物を建てたり、道路を作ったりできないよう、地域によって「建てられる建物」と「建てられない建物」を定めた法律です。

都市計画法では、13種類の用途地域があり、大きく住宅系・商業系・工業系に分けられていて、建てられる建物に制限が設けられています。工場を建設する際、適切だと考えられる用地が見つかったとしても、都市計画法により工場が建設できない場合があるため、事前に確認しましょう。
 

建築基準法

建築基準法は、日本で建築する全ての建築物に適用される法律なので、食品工場の建設の際も必須です。建築基準法は、建物の安全性や居住性を確保するための技術的基準・規定を定めています。

建築基準法では、確保しなければならない耐震基準など、建物の安全性に関わる基準が定められているほか、日影や接道など、周辺地域との関係性に関するさまざまな規制が定められています。建築物を建てる際には、建築基準法に従い、行政の審査や検査を受ける必要があります。

 

廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)

廃棄物処理法は、以下の目的で制定された法律です。

この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
引用:e-Gov|廃棄物処理法

食品工場に限らず、建設工事で発生する廃棄物については、「発注者等の関係者の責務と役割」として以下のように定められています。

発注者は、廃棄物の発生抑制、再生利用を考慮した設計に努めるとともに廃棄物処理の条件を明示する。
引用:環境省webサイトより

 

設工事で発生する廃棄物の処理は、工事の請負業者が行います。しかし、発注者側が処理をすべて業者任せにすることは適切ではありません。発注者には、工事の元請け業者に対し「廃棄物処理計画書」の提出を求め、計画通りに適切な処理がされていることを確認する役割が求められています。

建設工事で発生した廃棄物が適正に処理されず不法投棄された場合、廃棄物処理法違反になるだけでなく、「ルールを守らない企業だ」という周辺住民の不信感を招き、工場の運営に支障をきたす可能性があります。したがって、食品工場を建設する際は、廃棄物処理法をしっかり確認し、発注者としての責務を適切に果たすことが重要です。

 

建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)

建築物省エネ法は、建築物のエネルギー消費性能の向上を図るため、住宅以外の一定規模以上の建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務の創設、エネルギー消費性能向上計画の認定制度の創設などの措置を講じています。

建築物省エネ法では、非住宅部分(住宅部分を除く建築物の部分)の床面積が2,000㎡以上である建築物を建てる場合、国が定めるエネルギー消費性能基準(省エネ基準)への適合や完了検査を義務付けています。また、工事着工の21日前または3日前までに省エネ計画を所管行政庁へ届け出ることも義務付けられています。

建築物省エネ法の概要は以下の資料でご確認いただけます。
 
> 国土交通省「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」
 

環境基本法

食品工場などの大規模施設の建設では、工事に伴う騒音や振動の発生など、周辺住民の良好な生活環境を破壊する公害に注意しなければいけません。

環境基本法では、公害について「事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる(1)大気の汚染、(2)水質の汚濁、(3)土壌の汚染、(4)騒音、(5)振動、(6)地盤の沈下及び(7)悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。」と定義しており、この7つの公害を典型7公害とし、下記の法律でさまざまな規制を定めています。
 

  • 大気汚染防止法
    固定発生源(工場や事業場)から排出又は飛散する大気汚染物質について、物質の種類ごと、施設の種類・規模ごとに排出基準等が定められており、大気汚染物質の排出者等はこの基準を守らなければならないとされています。
  • 水質汚濁防止法
    水質汚濁防止法は、特定施設を有する事業場(特定事業場)から排出される水について、排水基準以下の濃度で排水することを義務づけています。工事排水による水質汚濁防止については、各自治体によって条例で定めている基準に違いがあります。
  • 騒音規制法
    騒音規制法は、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行うとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的としています。食品工場などの建設工事では、騒音に関する特定建設作業を行う場合に、作業の7日前までに市町村長などへ実施の届出をしなければならないなどのルールが設けられています。
  • 振動規制法
    工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる振動について必要な規制を行うとともに、道路交通振動に係る要請限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的としています。騒音規制法と同じく、工事に伴う振動に対するさまざまな規制が設けられています。
  • 悪臭防止法
    食品工場の建設現場は、悪臭規正法の対象には入りませんが、工事に伴い、周辺に多大な影響を与えるような悪臭が発生する場合、周辺住民との関係に亀裂が入る恐れがあるため、必要な臭気対策は行いましょう。
  • 土壌汚染対策法
    一定の規模以上(3,000㎡以上)の土地の形質の変更工事を行う場合は、土地の形質の変更者は、形質の変更に着手する30日前までに、土壌汚染対策法第4条第1項に基づく形質変更届出書を提出しなければならないと定めています。

 
上記以外に、地盤の沈下防止を目的とした工業用水法や建築物用地下水の採取の規制に関する法律なども関係することがあります。

地盤沈下の対策のための基準や必要な許可については、自治体ごとに内容が異なるため、建設を予定している地区の自治体に確認しましょう。
 

まとめ

今回は、食品工場の建設に関係する法令などについて解説しました。

食品工場は、消費者が口にする食品を製造するため、非常に高い安全性が求められます。そのため、食品衛生法をはじめとする様々な法律や条例によって厳しく規制されています。また、国が定める法律だけでなく、各自治体が定める条例も遵守する必要があります。自治体によって規制内容が異なるため、建設予定地の自治体に事前に確認することが重要です。

法令違反が発覚した場合、工場の完成後に稼働できなくなる可能性があり、最悪の場合、操業停止命令を受けることもあります。さらに、企業の社会的信用を大きく損ない、経営に深刻な影響を与える可能性があります。

そうならないためにも、食品工場の建設は、法令遵守を徹底し、安全で衛生的な工場を建設するために、計画段階から食品工場建設を専門とする【三和建設】にご相談ください。

工場建設の流れと注意点や関連する法律を解説しています

この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。