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法令/行政

投稿日:2023.10.22 
更新日:2023.11.07 

食品工場の臭気対策を悪臭防止法・悪臭規制を基に解説

食品工場の臭気
 
悪臭は、騒音や振動とともに感覚公害と呼ばれる公害の一種とされており、建築物で発生する「ニオイ」は、悪臭防止法の適用対象となります。「悪臭」とは、人が感じる「嫌なニオイ」や「不快な臭気」をひとまとめに表した言葉ですが、人によって”臭い”と感じる基準は異なります。悪臭防止法では、人によって受け取り方が異なる「ニオイ」について、悪臭と判断されるものを明確に定義している法律です。

さまざまな食品を取り扱う食品工場は、工場ごとに特有のニオイが存在していて、時には近隣住民から悪臭に対する苦情が出ることが考えられます。そこで当記事では、食品工場に必要な臭気対策について、悪臭防止法を基に解説します。

 

そもそも悪臭防止法とは

悪臭に関する規制については、昭和47年に国が悪臭防止法という法律を制定しています。悪臭防止法は、一部の例外を除き、悪臭を排出する全ての事業所が対象とされています。

 
1目的
悪臭防止法は、規制地域内の工場・事業場の事業活動に伴って発生する悪臭について必要な規制を行うこと等により生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
 
引用:環境省「概要」
 
悪臭防止法の体系

引用:環境省資料より
 
悪臭防止法は、上図のような体系になっていて、この法律による規制は、国が悪臭防止法として定めている規制の他、各地方自治体が独自に定める条例などがあります。地方自治体が独自に悪臭に関する規制を定めている場合は、そちらに準ずる必要があります。
 

悪臭防止法の規制方法

悪臭防止法では、臭気の排出規制及び敷地境界線での管理濃度の基準値として、次のいずれかの方法で規制されています。
 

  • 特定悪臭物質(現在22物質指定)の濃度
    アンモニアやトルエンなどの22種類の特定悪臭物質が、大気中にそれぞれ何ppm含まれるかという濃度での規制が特定悪臭物質濃度規制です。
  • 臭気指数(嗅覚を用いた測定法による基準)
    臭気指数は、人間の嗅覚を用いてニオイの程度を数値化したもの。 具体的には、もとのニオイを 人間の嗅覚で感じられなくなるまで無臭空気で薄めたときの希釈倍数 (臭気濃度)を求め、その常用対数に10を乗じた値です。悪臭防止法では、工場・事業場の敷地境界の規制基準(1号基準)を、臭気指数10〜21の範囲内で都道府県知事等が定めることになっています。

 
悪臭の規制は、上記のどちらかの基準が適用されます。どちらが採用されるのかは各自治体ごとに設定されますので、事業所が所在する自治体に確認しなければいけません。
 

悪臭防止法を順守しない場合、罰則がある

上述したように、悪臭は「公害」の一つで、近隣住民などから苦情が発生してしまうと、事業者は何らかの対策が求められます。規制基準を超える悪臭に対して適切な対策をとらない場合、市町村及び特別区の長から改善勧告、改善命令が出され、さらにそれに従わない場合は、懲役や罰金が科せられる場合もあります。
 
罰則の流れ
引用:環境省資料より
 
また、悪臭を伴う事故の発生があった場合、規制地域内の事業場設置者は、直ちに市町村及び特別区の長に通報し、応急措置を講じるなどの義務があるとされています。状況によっては、自治体から応急措置命令が発動されることがあります。
 

食品工場に必要な臭気対策とは

それでは、さまざまなニオイを発生させる可能性がある食品工場は、どのような臭気対策を行えば良いでしょうか?ここでは、環境省の資料を参考に、工場に必要な臭気対策を解説します。
 

STEP1 事業場周辺の調査

まずは、ニオイの発生源である食品工場の周辺に、ニオイで悪影響を与えそうな場所がないか調査しましょう。
 
近隣住居との距離を始めとして、悪臭苦情が出やすい厨房排気などについて、排気口の向きや高さ、空気の流れや滞留のしやすさをチェックし、問題点があれば改善する必要があります。

 

STEP2 悪臭原因の究明

悪臭の発生がある場合、ニオイの種類や発生する場所、またどの時間帯に悪臭が発生するのかやその頻度など、ニオイの原因を特定する必要があります。

 

STEP3 悪臭改善対策を実行

悪臭の原因に対して、適切な改善策を施します。悪臭対策では、脱臭装置の設置や排気口の位置・向きの変更など、工場の設備面からの対策が考えられますが、比較的お金のかからない簡単な対策でもニオイを大きく軽減することができる場合もあります。
 
ニオイの原因をしっかりと把握することができれば、脱臭装置の設置などにまで至らないケースもありますので、以下のような身近な悪臭改善対策を検討してみましょう。
 

  • クサイものに蓋をする
    生ごみ用のゴミ箱などは、少しの隙間からニオイが漏れて悪臭問題を引き起こすことがあります。したがって、ニオイが強い物を納める容器は、きちんと密閉できるようにすることが大切です。また、窓や出入り口などの開放部の閉鎖も効果的なので、シャッターの設置なども検討すべきでしょう。
  • ニオイのもとを素早く片付けるor発生しにくくする
    食品残渣などをそのまま放置すると、腐敗によってさらに強い悪臭を放つようになります。したがって、ニオイのもとは、出来るだけ早く片付けるようにしましょう。なお、腐敗する廃棄物を温度管理することで「腐らせない」ようにして悪臭の発生を抑える改善策もあります。
  • ニオイの排出方法を検討する
    ニオイをとり逃がさないよう、適切な排気フードの設置など、排気方法を慎重に検討しましょう。また、配管の漏れや計器の故障がないかなども、定期的にチェックする必要があります。
  • 排気が周辺住居に向かわないようにする
    周辺住居へニオイが向かわないよう、排出口の位置や向き、高さの変更を行いましょう。
  • 敷地周辺の景観に配慮する
    工場の敷地内に植林や植栽を行い、ニオイの拡散を防止するという対策も効果的です。敷地内への植林・植栽は、心理的にも効果的とされています。
  • 臭気発生作業の内容変更・中止
    製造過程の中で、ニオイが発生する工程がある場合、作業の見直しを行いましょう。

 
引用:環境省資料より
 
上図は、平成26年度に環境省が行った悪臭に関するアンケート調査結果をグラフ化したものです。食品工場での臭気対策では、「清掃・メンテナンスを行う」「臭気発生作業の見直し」と言った作業面での臭気対策が取り入れられている場合も多いですが、「臭気捕集方法やダクトの改良」「排出口の高さや向きの変更」「脱臭装置の設置」など、設備面から臭気問題の改善を試みる施設が多いように思えます。
 

STEP4 脱臭装置の検討

可能な限り臭気対策を行ったとしても、悪臭の問題を解消することができない場合、脱臭装置などの設備を導入する必要があるでしょう。
 
ただ、ひとくちに脱臭装置と言っても、性能や機器の特徴は各装置でさまざまです。したがって、問題となっているニオイの種類や設置スペース、コスト面(イニシャルコスト、ランニングコスト)などを十分に考慮して、最適な設備を選びましょう。
 
環境省資料より
参照:環境省資料より
 

まとめ

今回は、食品工場が注意しなければならない「悪臭」への対策について解説しました。記事内でご紹介しているように、悪臭は騒音や振動とともに公害の一種に指定されていて、悪臭防止法と言う法律まで制定されています。

さまざまな食品を製造する食品工場は、取り扱う食材によって非常に強いニオイを発生させることがあります。食べ物の臭いは「悪臭と言われるほど不快なものではないはず!」と考える方も多いのですが、近年では飲食店の厨房排気に関する苦情が社会問題にもなっているなど、悪臭は人の生活環境を悪化させる大きな要因とみなされています。

食品工場では、厨房排気を始めとして、原材料の保管や生ごみのゴミ置き場など、ニオイを発生させる可能性がある場所が少なくありません。悪臭問題は、苦情が発生してからでは適切な臭気対策が不可能なケースもありますので、工場の設計段階から臭気対策を検討することをおすすめします。

臭気対策にお悩みの企業様は食品工場の建設や改修実績豊富なFACTASへ是非ご相談ください。

この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。