食品
投稿日:2021.06.28
更新日:2022.09.26
食をとりまく環境の変化や国際化等に対応し、食品の安全を確保する目的で、平成30年6月に食品衛生法及び食品表示法の一部が改正されたのは記憶に新しいことでしょう。改正食品衛生法に関しては、HACCPに基づく衛生管理が制度化されるということが注目されていましたが、実はそれ以外にも食品営業の制度や衛生管理の方法等が大きく変更されています。
令和3年6月1日からは、事業者が食品等の『自主回収(リコール)』を行う場合、「食品衛生法及び食品表示法に基づき、リコール情報を行政に届出ることが義務化」されました。厚生労働省や消費者庁の公式サイト内には、「自主回収報告制度(リコール)に関する情報」の特集ページが作成されていますので、まだ確認していない方は、以下のページもご参照ください。
> 厚生労働省「自主回収報告制度(リコール)に関する情報」
> 消費者庁「食品表示リコール情報及び違反情報サイト」
食品等の自主回収報告制度については、食品関連事業者から届出されたリコール情報が、国の「食品衛生申請等システム」で一元管理され、一覧化して公表することで、速やかにリコール情報を消費者に提供することが目的となっています。
まだ創設されたばかりのシステムですので、「何をどうすれば良いのか?」と疑問点について、この記事では、どういった事例が届出の対象になるのか、また届出はどういった流れで行うのかを簡単にご紹介します。
食品等の自主回収報告制度の創設によって、事業者が食品等のリコールを行う場合は、行政への届け出が義務付けられました。これにより、事業者による食品等のリコール情報を行政が確実に把握することができ、的確な監視指導や消費者への情報提供につながることから、食品による健康被害の発生を防止できると期待されています。
食品事業者がリコール事案や回収状況の届出を行う際には、食品衛生申請等システムの「食品等自主回収情報管理機能」を利用します、そして消費者は、厚生労働省の『食品リコール公開回収事案検索』から、自主回収報告がなされた食品等の情報を確認することができるようになっています。
それではどういった事例が届出対象になるのかを、いくつかの例をあげてご紹介します。「食品等の自主回収報告制度」では、「食品衛生法違反又は違反のおそれのあるもの」と「食品表示法違反のもの」が届け出対象となっています。
以下のような場合、「食品等の自主回収報告制度」に基づいて届け出が必要です。
「食品衛生法違反又は違反のおそれのあるもの」の例
「食品表示法違反のもの」の例
以下のような事案は、届出対象外となっています。
食品衛生法
1.食品衛生法第59条第1項又は第2項の規定による命令を受けて回収をするとき
2.食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合として厚生労働省令・内閣府令(下記のファイル参照)で定めるとき
・当該食品等が不特定かつ多数の者に対して販売されたものでなく、容易に回収できることが明らかな場合
(例)地域の催事で販売された焼きそばについて、催事場内の告示等で容易に回収が可能な場合
(例)部外者が利用しない企業内の売店で販売された弁当であって、館内放送で容易に回収が可能な場合
(例)通信販売により会員のみに限定販売されている食品であって、顧客に対して個別に連絡することで容易に回収が可能な場合
・当該食品等を消費者が飲食の用に供しないことが明らかな場合
(例)食品等が営業者間の取引にとどまっており、卸売業者の倉庫に保管されている場合
(例)食品等が消費期限又は賞味期限を超過している場合
補足:期限として不当に長期の期間を表示している場合は、期限表示で適切に判断できないことから、法第58条第1項の「食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合」には当てはまらない。
食品表示法
1.食品表示法第6条第8項の規定による命令を受けて回収するとき
2.消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれがない場合として内閣府令(下記のファイル参照)で定めるとき
・当該食品の販売の相手方(消費者を含む。)が特定されている場合であって、当該食品の販売をした食品関連事業者等が当該販売の相手方に直ちに連絡することにより、当該食品が摂取されていないこと及び摂取されるおそれがないことが確認できる場合引用:北九州市ホームページより
それでは最後に、届出の流れをご紹介します。
自主回収の届出は上記の流れで行われます。
※1 食品表示法の基づく自主回収の届出については、食品関連事業者などの主たる事業所の所在地を管轄する保健所に届出を行います。
※2 クラス分類については、厚生労働省の公式サイトでご確認ください。
今回は、令和3年6月1日に施行されて「食品等の自主回収報告制度」の概要をご紹介しました。この制度は、より安全な食品の提供体制を整えることが目的で、製造した食品に何らかの問題が生じた場合、製造業者が速やかに対処しなければならないことになっています。平成12年に発生した「牛乳集団食中毒事件」では、製造業者である企業の対応が遅れたことで、被害者が増えてしまった…といった事例もあることから、そういった事が二度とないようにするためには、最適な制度かもしれません。
この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。