建築
投稿日:2021.04.03
更新日:2022.09.26
昨年から続く新型コロナウイルス問題ですが、ようやく日本国内でも新型コロナウイルスワクチンの接種が開始され、コロナ問題収束の光が見え始めたような気がします。
しかし、2021年1月にも、東京や大阪など、大都市圏を中心に二度目の緊急事態宣言が発令されるなど、さまざまな業界に深刻な影響が出ていると言われています。特に、今回の緊急事態宣言に関しては、飲食店の時短営業が中心になっていることから、食品関連事業者にとってかなりの大打撃となっていると言われています。
飲食店に関しては、時短営業に協力することで政府からの『協力金』が支給されるのですが、食材を納入する業者や生産者に関してはそういった支援策の手が届いておらず、非常に深刻な打撃を受けていると言われています。
そこでこの記事では、今回の新型コロナウイルス問題が食品製造業界にどのような影響をあたえているのかについて紹介します。
Contents
ここでは、東京商工リサーチが1月6日に公表した「新型コロナ」関連破たんのデータをご紹介しておきます。
この調査では、2021年1月5日までの全国での「新型コロナ」関連破たん(負債1000万円以上)が累計850件に達したと公表されています。その中でも、時短営業などを求められている飲食業については「144件」と業種別では最も多い倒産件数となっています。テレビのニュースなどでも、飲食業は新型コロナウイルスの影響で非常に苦しい立場にあるなどと報道されていますが、このデータからも飲食業へのコロナ問題の影響が良くわかります。
しかし、決して見逃してはいけないデータとして、飲食業の不調に引きずられる形で、食品の製造や販売を行う関連事業者の「新型コロナ」関連破たん(負債1000万円以上)も増加しているというものがあります。昨年2月からの累計で食品関連(食品製造、販売)の「新型コロナ」関連破たん(負債1000万円以上)が、全国で84件と非常に深刻な状況に陥っていると考えられます。また、個人消費の低迷が響いている…と言われるアパレル関連業者が82件、大打撃を受けていると言われている宿泊業でも60件と、いずれも食品関連業者の倒産件数を下回っており、ここにきて新型コロナ問題の食品関連事業者への影響が目立ち始めています。
参照データ:流通ニュース『「新型コロナ」関連破たん84件』より
それでは、新型コロナ問題の発生から約1年が経過した現在、食品関連事業者にどのような影響が生じているのかについて、いくつかの事例をご紹介しておきましょう。
コロナ禍の現在では、テレワークの浸透や飲食店の時短営業などもあり、業務用加工食品の需要が低下していると言われています。しかしその一方で、巣ごもり需要や内食化の拡大により、市販用食品についてはかなり好調に推移していると言われています。こういった状況もあり、国内の加工食品製造会社では、個人向け食品への注力を考えている企業が増加していると言われています。
ある調査会社が行ったアンケートでは、コロナ禍における今後の事業展開について「巣ごもり消費への対応」を考えた商品開発を検討していると回答した企業が7割を超えていたそうです。実際に、さまざまな業界が新型コロナウイルスによる大打撃を受けている中で、家庭用冷凍食品の2020年市場規模(末端売価ベース)は、前年比15%増程度になると推測されているなど、巣ごもり需要によって急拡大をしています。
参照データ:日本食糧新聞報道より
世界中で『食品ロス』への対応が急がれている中、今回の新型コロナウイルス問題では、食品卸会社において大量の食品廃棄問題が生じていると言われています。
要因としては、テレワークと言った新しい働き方を導入する企業も増え、さらに飲食店の営業時間の短縮などで、店舗や社員食堂からの食品の注文が大幅に減少してしまい、在庫食品を大量に破棄せざるをえない事態に発展しています。一部の食品は、賞味期限が切れる前に、支援団体などに寄付するなどの対策を行っているものの、大部分の在庫は破棄せざるを得ないのが実情だそうです。
さらに、注文があったとしても、配送する食品の量が少なくなっているため、小型トラックに切り替えたとしても、人件費や燃料代の負担が大きくなっているようです。
それではここからは、コロナ禍の中で、食品製造現場が抱えている悩みについてご紹介していきましょう。ここでは、「月刊食品工場長(2021.2月号)」で行われたアンケート調査を参考に、食品製造現場の現状と、今後の課題についてご紹介しておきます。
このアンケート調査では、新型コロナウイルスの感染拡大により、生産量などに何らかの影響が生じたのか?など、現状の課題を明らかにするとともに、これから迎えるWithコロナ時代に備えるため、どのような取り組みを検討しているのかといった調査が行われています。
食品製造現場への新型コロナウイルスの影響を理解するのに非常に有効な調査となっていると思いますので、重要ポイントをいくつかご紹介しておきます。
新型コロナウイルスの影響によって、生産量に何らかの変化があったか?という質問に対しては以下のような結果となっています。
上記のように、新型コロナウイルスの感染拡大により、過半数の企業では生産量が減少したという結果になっています。この結果は、外食向け業務用食品や学校・企業向けの給食や弁当、土産品の食品などの注文が大幅に減少したことが要因だと考えられています。なお、生産量が増加したと答えた企業は、調味料やレトルト食品、麺類製造業などで、巣ごもり消費急増による恩恵を受けた形となっています。
上述のように、「生産量の減少した」と答えた企業が過半数を占めているのですが、今のところ直ちに人員削減につながるほどのダメージを受けている製造現場は少ないと言われています。しかし、2021年に入り、2回目の緊急事態宣言が発令されるなど、業務用食品などの受注回復がさらに遅れるようであれば、人員削減に踏み切らざるを得ない…という企業が増える可能性もあるでしょう。このような状況の中、食品製造現場では、新型コロナウイルス感染拡大前に策定していた感染症対策マニュアルの見直しを行った工場と、新たに策定した工場を合わせると約6割にのぼったという結果が出ています。
具体的な感染症対策については、以下のようなことがポイントとなっています。
共用エリアでの対策
不特定多数の方が使用する共用エリアでは、徹底的な消毒を行うと共に、さまざまな対策が行われるようになっています。
上記の他にも、可能な従業員は在宅勤務の実施や出張制限など、さまざまな対策が行われるようになっています。
製造エリアでの対策
人が口にする食品製造現場では、新型コロナウイルス感染拡大以前から、非常に厳格な衛生管理体制が整えられています。しかし、コロナ禍の中さらなる対策が取り組まれるようになっています。
それでは最後に、コロナ禍の中、食品製造現場がいま最も困っていると声を上げている内容と、これから迎えるWithコロナ時代に向けてどのような取り組みが考えられているのかについても簡単に触れておきましょう。
新型コロナウイルス感染拡大以後、さまざまな取り組みを行っている食品製造現場ですが、以下のような悩みを抱えていると言われています。
このように、食品製造現場は新型コロナウイルスの影響でさまざまな課題を抱えています。そして、Withコロナ時代を迎えるにあたって以下のような取り組みを考えているそうです。以下で、「月刊食品工場長(2021.2月号)」で行われたアンケート調査内で、「今後、取り組みたいこと」として答えた企業が多かった項目をご紹介しておきます。
Withコロナ時代に向けた取り組みとしては、『自動化・省人化』をあげる企業が最も多かったようです。もともと少子高齢化などにより人手不足が深刻化していると言われている食品製造業界では、自動化やロボット化による省人化が注目されていました。ここに、今回のような感染症問題が生じたことで、この流れがさらに加速していくと考えられるのではないでしょうか。
データ参照:「月刊食品工場長(2021.2月号)」
今回は、昨年から続く新型コロナウイルス問題が食品製造会社など、食品関連事業者にどのような影響をあたえているのかについてご紹介してきました。テレビのニュースなどでは、コロナ禍における飲食店の時短営業に関する報道が非常に多いため、漠然と「飲食店は大変なのだな…」と考えている方が多いと思います。しかし、飲食店の業績不振は、それを取り巻く関連業者へも多大な影響をあたえています。それにもかかわらず、飲食店のような手厚い支援策が行き届いているとは決して言えないような状況が続いており、今後の事業展開に頭を悩ませている企業が多いようです。
特に今後は、テレワークの浸透などから業務用食品の需要低下が見込まれているため、家庭用食品の開発に注目する企業が急増すると考えられています。いよいよ日本国内でも、新型コロナウイルスワクチンの接種が始まりましたので、コロナ問題の終息を期待している方は多いと思います。しかし、食品製造業界は、まだまだ難しい舵取りが続くと予想できるのではないでしょうか。
この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。