建築
投稿日:2020.06.16
更新日:2022.09.26
食品工場の建設や改修を検討した場合、非常に重要なポイントの一つとなるのが動線計画とゾーニング計画です。
食品工場で製品が作られる工程には、原材料の搬入から調理・加工、充填や包装など、さまざまな工程が存在しています。当然、製品を作る工程では、「人」「物」「空気」がそれぞれ動くことになりますので、それらの動きによって汚染の流入・混入、拡散、交差汚染などの危険性が存在するのです。したがって、このような食品の汚染を防ぐためにも、衛生管理ゾーンを分けるゾーニング計画が非常に重要になるのです。
また、作業員が無駄なく動けるようにするためには「人」「物」の流れがスムーズな施設であることが重要になります。そこで今回は、ゾーニング・動線計画に優れた工場・倉庫を造るためにおさえておきたいポイントをご紹介します。
まずは食品工場で非常に重要とされる『ゾーニング』について簡単にご紹介しておきましょう。ゾーニングとは、その言葉から分かるように食品工場などの製造施設の中を製造工程や衛生度に分けたゾーンに区分することです。ちなみに、一般的衛生管理プログラムでは、「清潔」「準清潔」「汚染」の3段階のゾーンに分けて考えられます。
例えば、製品を作るための原材料のことを考えた場合、搬入時には段ボールなどの梱包材に汚れや微生物が付着している可能性があります。それでは、汚れが付着した段ボールの状態のまま保管庫から下処理場などに移動させてしまった場合、どうなるでしょうか?このような場合には、下処理をしている食材と段ボールに付着していた汚れや虫、菌などが共存する空間が生まれてしまうことになるのです。この状態で食材の下処理をしていれば、その食材は汚染されてしまう危険が高くなるでしょう。
もちろん、他の工程でも同じことが言え、きちんとゾーニングがなされていない施設では、作業場所が変わるとき、工程が変わるときに汚染物質も一緒に移動してしまうリスクが非常に高くなるのです。
したがって、食品工場などでは、こういった交差汚染を防ぐためにも、しっかりとしたゾーニング計画が必要になるのです。また、あわせて動線を確立することも非常に重要です。食品工場では、施設内を動く作業員が戻ったりして作業員同士が交差しないように動線を一方向にするなどの対策を行うことで、交差汚染を効果的に防ぐことが可能です。
ゾーニングとは?食品工場におけるゾーニングの意味と重要性について解説
それでは、実際の食品工場改修事例をもとに、優れた工場・倉庫を造るためにおさえておきたいゾーニング計画と動線計画について簡単にご紹介しておきます。
改善前の状況
上図のように、改善前の工場には以下のような問題点が生じていました。
改修前の工場では、無駄な廊下が発生していることで、入出荷の効率が非常に悪い動線となっていました。このようなゾーニング・動線になってしまっていては、作業員同士による交差汚染のリスクも非常に高くなってしまいます。
したがって、施設の改修にあわせて、無駄のない動線を実現したのです。汚染区域となる入出荷室は、全ての倉庫と面するように配置し、入出庫も無駄なく行えるようになります。また、全ての工程が1WAYでつながっていくことにより、交差汚染の心配がない施設を実現することができます。
こういった無駄のないゾーニング・動線計画は、作業員も効率的に動けるようになりますので、施設全体のコストダウンにも役立ってくれます。
今回は、食品工場の建設や改修を検討した際に、非常に重要なポイントとなる動線計画とゾーニング計画について、実際の改修事例をもとにご紹介してきました。
通常の工場や倉庫であれば、無駄な動きが少なく、作業性が良いように動線計画を立てれば良いのですが、食品工場では『汚染の防止』という視点を加えた計画が必要になってきます。工場内では、「人」「物」「空気」の移動が大きな汚染の要因となってしまうため、作業員の歩行経路や原材料・製品の運搬経路はもちろん、空気の流れまで考えたゾーニング計画と動線計画が重要です。なお、ゾーニングや動線計画がしっかりとなされた食品工場では、施設内での汚染防止が可能になるだけでなく、作業員がより効率的に動くことができるようになりコストダウンも期待できるというメリットもあるのです。
三和建設では、温度管理・湿度管理・圧力管理・清浄度に応じたゾーニング・的確な材料選定など、お客さまが抱える食品工場特有のさまざまな悩みを解決いたします。お気軽にお問い合わせください。
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この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。