食品
投稿日:2020.02.27
更新日:2022.09.26
近年、食品の製造現場において、工場スタッフの手やユニフォームなどに付着した菌の持ち込みが原因で食中毒を発生させる事例が増えています。
学校給食でノロウイルスによる食中毒が発生したケースでは、混ぜご飯に散らされた刻み海苔からノロウイルスが発見されました。
調査をした結果、海苔を刻む工程で、作業員の手に付いていたノロウイルスの菌が海苔に付着したことが原因と分かりました。
この事例は、衛生管理を徹底している食品工場においては極端な事例ではありますが、工場スタッフによる菌の持ち込みリスクの恐ろしさを物語っています。
この記事では、食品工場内に細菌を持ち込まないために役立つ「非接触センサー」についてご紹介します。すでに導入されている方は見直しのために、これから導入を検討されている方は、どのような活用方法があるのか、参考にご覧ください。
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細菌というのは目には見えないのがとても厄介で、分析するにも高度な機器や時間が必要であり、その場ですぐ菌の有無を確認するのは困難です。 だからこそ、食中毒の原因となる菌の混入や発生を防ぐための徹底した対策が必要です。
食品工場においては雑菌を除去、防御するための入室時の手洗いや異物混入の対策としてエアシャワーを設置する等の対策を実施したり、日々の清掃など菌の入り込みや繁殖を防ぐ設備での対策をしております。
これに加えて、できる限り人が手で触れる部分をなくし、手を使わずに扉を開閉したり自動で洗浄できる設備を増やすことが望まれます。 ドアを開けた手で機械に触れるといった日々の作業や工程において、手の接触が避けられれば、思わぬところからの菌の持ち込みを防ぐことが可能です。
食品工場内には、衛生管理の観点から加工室に入室する前や、作業後の汚れた手を洗ったり、生の食材を扱った後にすぐに手を洗える手洗い場が備えられています。 その際に、蛇口をひねる動作や、レバーの上げ下げが必要な手動の水道を使っている場合には、菌の持ち込みリスクは完全には防ぎきれていない可能性があります。 たとえば、卵の殻を触ったり、野菜や食肉などを触ったりした手で水道の蛇口やレバーをひねったとしましょう。 殺菌ソープや消毒液を駆使して水洗いすれば、その時点では殻に付着している可能性のあるサルモネラ菌や、野菜や生の食材に付着していた細菌などは落とせるかもしれません。
ですが、水道の水を停めるために再び蛇口やレバーに触れた際、そこに手洗い前に菌を移してしまっていれば、再び手に菌を付着させてしまいます。 その方だけでなく、それ以降に水道の蛇口やレバーに触れた人も菌に触れ、工場内へと持ち込んでしまうリスクがあるのです。
このような手洗い場には、水道の水出しはもちろん、ハンドソープや消毒液なども自動噴射ができる非接触センサーの導入が常識となっています。
工場内のトイレ設備にも、非接触センサーの導入を進めましょう。 生産エリア内にトイレを設置するという状態を避ける事が絶対条件になりますが、 休憩スペースでも同様の考えをもって計画をしましょう。 昼休みや休憩後のリスクを考えると理解頂けると思います。 洗面スペースの水道やハンドソープなどの利用はもちろん、トイレを流すレバーなども接触せずに自動で洗浄されるのが理想的です。
大腸菌やノロウイルスなどがレバーや水道の蛇口などに付着していた場合、それを持ち込んでしまうリスクがあります。 トイレを流す際は、手をかざすだけで流れたり、自動洗浄機能付きで、便座から立ち上がると自動的に流水する便器やウォシュレットに交換すると安心です。 工場内の手洗い場と同様、洗面スペースの水道、ハンドソープ類も非接触センサーをおすすめします。
近年、デパートなどの商業施設のトイレでも顧客の利便性向上と節水を兼ねて、非接触センサーで触れずに洗浄できる水道設備や手をかざすだけでハンドソープが出るようにしている施設も少なくありません。 コストカットのための節水も目的にしているために一度に出る水の量が少ないケースや、中には導入の際の設備費を抑えるためか、非接触センサーの反応が悪く、かえって不便を感じることもあります。
しかし、食品工場においては、業務が忙しい中で、センサーがなかなか反応しないことや水の出が悪くて十分な殺菌・洗浄ができないとなると、非接触センサーを導入する意味がありません。 手に付いた菌は流水で30秒以上流すだけでも大幅に軽減されると言われています。 殺菌ソープや消毒液の使用はもちろん、たっぷりの流水で流すことで食中毒防止に役立ちます。
非接触センサーの導入にあたっては、反応がよい高品質なものを選ぶとともに、一般的に使われる節水機能は使わず、適量の水が出るよう設定しましょう。
工場内の出入りや違う工程の作業場に入る際の仕切りのドアなども、手動ではなく、センサー対応にすると安心です。 生の食材を扱っているときや手洗いが不十分な状態などで直接ドアノブやレバーに触れることによる接触感染リスクを防げます。
一般的な自動ドアのほか、特定の人しか入れないエリアを設ける必要がある場合はユニフォームに付けているタグやバーコードにセンサーが反応することで解錠できるような、最新の自動センサードアを導入することでフードディフェンスにも有効になります。
食品の加工や製造にかかわる方であればご存じの、HACCAP義務化を目前に控えた今、HACCAP基準を満たすための設備の見直しを行っている事でしょう。その際には、ぜひ今回ご紹介した「非接触センサー」の導入も併せて設備改修の見積もり項目に加えてみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。