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食品

投稿日:2022.05.06 
更新日:2022.09.26 

食品工場の監査の種類と監査でチェックされる内容について

今回は、食品工場の監査について、その種類と監査で何をチェックするのかを簡単に解説していきたいと思います。

食品製造業者は、安全な食品を提供するために、非常に厳しい衛生管理や品質管理が求められています。そして今回取り上げる『監査』は、食品工場などが「安全な食品を提供する」ための管理対策としても重要な位置付けにあります。適切な監査を行うことで、工場の品質管理の仕方や製造工程を把握することができますし、何らかの改善点が見つかれば、より安全な作業環境を構築することができるかもしれません。

食品製造業での工場監査とは?

それではまず、食品製造業における工場監査がどういったものなのかについて解説していきましょう。人々の生活が多様化している現在では、温めるだけで美味しく食べられる加工食品を手にする機会は非常に多くなっていると思います。私たちは、コンビニやスーパーなどに並んでいる出来上がった加工食品の姿しか見えませんが、消費者の手元に届くまでには、多数の製造工程を経て製品として製造されるものです。そして、こういった加工食品の製造過程で安全性の確保や品質の高さを維持することは、食品製造における大きな課題となっています。

例えば、製品の中に一つでも規格外製品や異物・細菌の混入など、製品トラブルとみられるものがあれば、同じラインで製造されていた製品を大量に廃棄しなければならなくなることも少なくありません。そのため、食品の製造現場では、安全かつ高品質な製品を提供し続けるため、実際の工場での品質管理の仕方や製造工程をチェックすることを目的に工場監査が行われています。

なお、工場監査は大きく分けて3つの種類がありますので、それぞれがどのような目的で行われているのかを押さえておきましょう。

工場監査の種類について

それでは工場監査の種類についてそれぞれがどのような意味を持つのかを解説しておきます。「工場の監査」と聞くと、何らかの問題が無いかを厳しくチェックするために行うモノと言ったイメージで、なんとなくネガティブな印象を持ってしまう方も多いです。しかし、工場監査は、「第三者機関の確認などを受け、質の高い食品を製造している」と言うことを示すことにもつながるので、「顧客の信頼性を高める」と言うポジティブな意味合いも持っています。

以下で、3つの工場監査について、それぞれの意味を簡単に解説しておきます。

  • 自社で実施する第一者監査(内部監査)
    第一者監査は、自社の工場を内部の人員で構成された監査員によりチェックするものです。
    この監査は、標準作業やマニュアル通りに業務が実施されているのか、作業工程がISOの要件を満たしているかなどを判断することが目的です。
  • 取引先などが行う第二者監査
    取引先や委託先、親会社など、自社と利害関係がある人員で構成された監査員によるチェックです。監査は、自らの要求事項への適合性を検証することが主な目的になります。
  • ISOの監査員などが行う第三者監査
    第三者監査は、ISOの監査員など、自社と利害関係にない独立した機関が行う監査です。この監査は、「ISO22000」や「FSSC22000」などと言った、食品安全に関する国際規格の取得や更新審査など、各機関がそれぞれの要求事項を満たしているのかを査定するものです。

工場監査のチェックポイントとは?

それでは、実際に工場監査が行われるとき、どのようなポイントをチェックされるのかも押さえておきましょう。食品工場は、人が口にする食品を製造するという特性上、消費者の安全や製品の品質を守るため、非常に厳しい衛生管理が求められています。

そして、工場監査は、製品の安全や品質を守るためにどのような品質管理がなされているのか、実際の製造工程を把握するため、さまざまなポイントをチェックします。ここでは、工場監査でチェックされる項目をご紹介していきます。

工場の入室管理について

工場監査の対象は、作業工程だけにとどまりません。例えば、工場内への入場者をどのように管理しているのかもチェックされます。これをチェックすることで、情報漏洩やフードテロなどへのリスク管理がなされているのかが分かります。消費者に安全性の高い製品を提供しなければならない食品工場なのに、誰でも簡単には入れてしまうセキュリティ体制では心配です。他にも、従業員の身だしなみのチェックがきちんと行われているのかなどもチェックされます。具体的な指摘事項は以下のような項目です。

  • 作業場やクリーンルームへの入室方法や手順に間違いはないか
  • 従業員の身だしなみのチェックがきちんとなされているのか
  • 作業場への持ち込み禁止物のルールが設けられているか
  • 来客者の入場ルールなどが定められているか

作業工程の確認について

工場監査では、作業工程をチェックすることで、製品の品質が一定になるのかが確認されます。作業工程や作り方にムラがあれば、同じ品質の製品を作ることができなくなります。製品の品質にばらつきがあると、消費者や取引先に影響を及ぼします。
この部分では、品質を一定に保つために、工場がどのような取り組みを行っているのかがチェックされます。具体的には以下のような項目です。

  • 製造工程図(フローダイアグラム)が作られているのか
  • 現場の作業が製造工程図と一致しているのか
  • 製造設備のメンテナンスがきちんとなされているのか
  • 加熱や冷却温度などの記録があるか、またきちんと保管されているか

工場内の清潔感について

食品工場では「清潔である」と言うことが衛生管理の基本中の基本となります。食品関連事業者であれば、5Sや7Sという言葉を頻繁に耳にすると思いますが、工場監査では、工場内が整理され、清潔に保たれているのかはしっかりとチェックされます。
安全で高品質な食品を製造するには、清潔感のある工場は非常に重要な要素になります。

  • 工場内の清掃ルールは設けられているのか
  • 5Sもしくは7Sが徹底されているか
  • 防虫・防鼠対策が行われているか
  • 調理器具や製造設備はきちんと洗浄できているか

製品の検査方法について

安全な食品を提供するためには、異物混入の可能性がある不良品を的確に分別できなければいけません。不良品の分別がなされずに出荷されてしまうと、食品事故やクレームに繋がってしまうリスクがあります。
したがって、工場監査では、出荷する前にどのようにして不良品を見分けているのかをチェックされます。具体的には以下のような項目です。

  • 異物混入の検知ができる仕組みが導入されているのか
  • 検知機器が導入されている場合、対象や使い方が適切か
  • 廃棄品についての明確なルールがあり、またそれが徹底されているか

工場の監査では、上記のように、非常に細かなポイントまでチェックされることになります。なお、農林水産省が公表している「FCP共通工場監査項目に関する要求水準及び監査手法」では、他にもさまざまな指摘事項の例が紹介されていますので、ぜひご確認ください。

参照:FCP共通工場監査項目に関する要求水準及び監査手法
参照:農林水産省「FCP共通工場監査項目」ページ

まとめ

今回は、工場監査の種類と、実際に監査でチェックされるポイントについて解説してきました。この記事でご紹介したように、一口に工場監査と言っても種類が存在していて、自社内の人員で監査をする場合と、取引先の人間で構成された組織で監査するのでは、その目的などが異なることから確認するポイントは違ってきます。

ただ、食品工場の監査は、「消費者が安全に食べられる食品を作れる施設なのか?」をチェックするのが基本ですし、常日頃から衛生管理や品質管理に取り組んでいれば、大きな問題点が生じることは少ないのではないでしょうか。なお、工場監査は「より安全」「品質がより高い」工場を目指すためのものですので、改善点が出てくること自体は悪い事ではありませんが改善は迅速に行いましょう。

この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。