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革新/改善

投稿日:2022.01.15 
更新日:2022.09.26 

コスト削減と脱炭素経営を叶える太陽光発電。最新の事例を紹介

国際的に環境保護の機運が高まっている中、急速な需要拡大を見せているのが再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーとは、石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとは異なり、太陽光や風力、地熱と言った自然界に常に存在するエネルギーのことを指しています。そして、これらのエネルギーは、「枯渇しない」「どこにでも存在する」「CO2を排出しない(増加させない)」と言う3つの特徴持っており、地球環境保護を考えた場合には、これらのエネルギーの活用が非常に重要とされています。

再生可能エネルギーと聞けば、ほとんどの方が太陽光発電システムが真っ先に頭に思い浮かぶと思います。近年では、太陽光発電以外にもさまざまな技術が登場していますが、太陽光発電は、一般家庭はもちろん、工場や倉庫などの事業用施設においても、デッドスペースを活用して発電することができ、大幅なコスト削減にも貢献してくれる非常に有用な技術と言われております。しかし、従来の太陽光発電システムは、1枚の重量が15~20キロ程度もある太陽光パネルが採用されており、柱が少ない建築物などには大量設置が難しいという問題もあります。また、築年数が経過して屋根の状態があまり良くない建物の場合、パネルの設置そのものができないケースもあるなど、コスト削減や脱炭素経営を目指して太陽光発電を導入したくても、できない…という声も少なくないようです。
そこでこの記事では、ここ数年、さらなる進化を遂げていると言われている太陽光発電について、どのような技術開発が進んでいるのかをご紹介します。

太陽光発電技術にも種類が存在する

太陽光発電と聞けば、ほとんどの方が戸建て住宅の屋根の上などに設置されているパネルで太陽光エネルギーを取り込み、電力に変換するシステムをイメージすると思います。実際に、私たちの目に触れる場所では、この方式の太陽光発電が最も普及していますし、他にも種類があると言われると驚いてしまう方も多いです。

太陽光発電は、太陽光が当たることで、電気を発生させる性質を持つ「太陽電池」を利用して行われています。しかし、この太陽電池は1種類しか存在しないわけではなく、素材や構造によっていくつかの種類が存在しています。太陽電池は素材によって大きく3つに分類することができますので、以下でそれぞれを簡単にご紹介しておきます。

シリコン系太陽電池

シリコン系太陽電池は、さらに単結晶シリコンや結晶シリコンという多結晶系のものと、薄膜系シリコンと言う非晶質系の2つが存在します。単結晶シリコンは、変換効率、耐久性共に高く、小さな面積でもそれなりの発電量を確保することができることから、家庭用の発電システムによく採用されます。多結晶タイプは、価格が安いということが大きな特徴で、メガソーラーや投資用の太陽発電システムなどで使用されており、現在の太陽電池の主流となっています。薄膜系シリコンについては、『薄い』と言うことが特徴で、この特徴のおかげで加工がしやすく、軽量なので、前述の結晶系が採用できない場所でも導入できるのがメリットです。

化合物系太陽電池

化合物太陽電池は、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、CdTe太陽電池という種類が存在します。これらの太陽電池は、銅やセレンなどが採用されており、シリコンを含んでいないことから、シリコン系とは区別されています。現状は、コスト面に大きな課題があることから、一般家庭などでは普及しておらず、宇宙空間で使用される太陽電池となっています。

有機物系太陽電池

名称から分かるように、有機物から作られている太陽電池で、曲げ加工などが可能だという点が特徴です。ただし、柔軟性がある割に耐久性が低いという点がデメリットになって一般にはあまり普及していません。

名このように、太陽光発電にもさまざまな種類が存在していて、現在でもシステム自体は日々進化していっていると言われています。実際に、一般家庭でも採用されるようになってからそれなりの時間が経過した現在では、太陽光発電システムのデメリットを解消した新たな製品が多く登場し従来の太陽電池では不可能だった使い方が可能になっています。ここでは、いくつかの最新事例をご紹介してきましょう。

AGC硝子建材株式会社 サンジュール®

引用:AGC硝子建材株式会社公式サイトより

まずは太陽電池と、合わせガラスを組み合わせた太陽光発電システムです。どのような建物でも、採光のために窓が設置されていますが、AGC硝子建材株式会社では、その窓を太陽光発電システムとする画期的な商品を開発しています。

太陽光発電は、屋根の上にパネルが寝かせて設置されているイメージですが、この製品は垂直設置で効率よく発電が可能とされています。上の画像は、AGC硝子建材鹿島工場で実際に採用された設置事例です。このように、一見すると建物の窓がそこに存在するだけで、窓が「発電も行う」と言う事実は、非常に大きなコスト削減を期待できるようになるのではないでしょうか。

参照:AGC硝子建材株式会社公式サイト

塗る太陽電池『ペロブスカイト太陽電池』

次は、「塗る太陽電池」とも言われているペロブスカイト太陽電池です。『ペロブスカイト』は、チタン酸カルシウム鉱物の名称で、灰チタン石を発見したロシアの科学者にちなんでいるそうです。そして、2009年に桐蔭横浜大学の研究チームが世界で初めてペロブスカイト太陽電池を発表しています。この太陽電池は、基板に材料を塗ることで太陽光発電ができてしまうことから、「塗る太陽電池」などとも呼ばれています。

ペロブスカイト太陽電池の大きな特徴は、「塗るだけで太陽光発電ができる」と言うことから、他の技術と比較して圧倒的にシステムを低コスト化できるという点です。実際に、1平方メートルあたりの発電コストが約150円と、かなりの安さを実現しています。他にも、基板として薄いフィルムなどを採用すれば、システムの軽量化が実現でき、曲面加工なども可能になると言われています。

非常に有用な技術である『ペロブスカイト太陽電池』ですが、悪天候に弱く、耐久性も他の技術と比較すると低いという点が致命的な弱点とされています。

現在、東芝が『ペロブスカイト太陽電池』に注力しており、ペロブスカイト太陽電池を使って都市全体を発電所にという目標を掲げています。

参照:株式会社東芝プレスリリース

透明な太陽光発電

最後は、アメリカのミシガン州立大学の研究チームが発表し、昨年、日本国内でもENEOSホールディングスと日本板硝子が実証実験をスタートしたとニュースになっていた『透明な太陽電池』です。この太陽電池は、有機分子を用いています。

一般的に、太陽光発電を実現するパネルなどは、ガラスの中によくわからない回路のような物が設置されているというイメージですよね。そのため、建物の窓部分などに太陽光パネルを設置した場合、外が見えなくなってしまうことから「屋根に設置する」のが一般的な訳です。

それが、アメリカで開発されたこの太陽電池は、透明であることから、窓に採用したとしても、建物の景観を壊すことなく、採光の役割も果たしてくれます。また、透明な窓で太陽光発電が可能になるとなれば、今までは太陽光発電システムの設置を諦めていたような、都市部のビル密集地帯が一大発電所に変わる可能性があります。もちろん、こういった都市部は、街づくりの一環で景観を守るためのルールが設けられていますが、この太陽電池は、あくまでも『透明な窓』ですので問題なく採用できるでしょう。ビル群では、日照時間の問題が指摘されるかもしれませんが、今までは発電することができなかった場所で発電できるようになるわけですので、それ以上の効果があると思われます。

参考:ゼロエネルギー実現に貢献する透明な窓用太陽光発電パネルの実証実験の開始について

まとめ

今回は、一般社会にも広く普及している太陽光発電システムのさらなる進化についてご紹介してきました。SDGsや脱炭素社会というキーワードを頻繁に耳にするようになっている近年では、再生可能エネルギーの技術革新が必要不可欠となっています。特に、大量のエネルギーを使用する工場や倉庫などの大規模施設では、化石燃料を採用した電力ではなく、再生可能エネルギーへの切り替えが社会全体から求められるようになっています。

現在は、工場や倉庫の屋根に太陽光パネルを設置するという方法が一般的ですが、今後は窓が発電したり外壁そのものが発電したりする時代がすぐそこまで来ているのかもしれません。なお、太陽光発電に関しては、太陽からのエネルギーをわずかな時間しか蓄えることができない…と言う点がまだまだ大きな課題となっています。この部分は、蓄電池のさらなる進化が求められることでしょう。

この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。