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投稿日:2021.07.06 
更新日:2022.09.26 

食品工場の異物混入対策!防虫対策は丸投げでなく『セルフ防虫管理』が大切

今回は、食品工場での異物混入対策として、非常に重要な位置付けにある『防虫管理』の基礎知識についてご紹介していきます。以前ご紹介した、「食品工場での防虫対策!発生源ごとに適切な対策を!」という記事の中でも触れていますが、食品工場での防虫管理に関しては、可能な範囲で自分たちで行っていくという『セルフ防虫管理』がとても大切です。一般的には、PCO専門業者と契約して、管理そのものを業務委託しているというケースが多いのですが、ある程度の基礎知識を身に着けることで、工場内部の人員によって防虫管理を行っていくことは可能になります。

そもそも、外部業者については、月に1回、多くても数回程度、点検の為に訪問するのが一般的です。その一方、工場の従業員は、毎日のように現場にいる為、それらの人員が正しい知識を身につけることで、問題があった際の発見については『セルフ防虫管理』を行っていた方が確実に早くなるはずです。もちろん発生した昆虫の駆除施工などは、非常に高い専門知識が必要ですので、外部に委託したほうが効果的だと考えられます。つまり「できること・できない(難しい)こと」をしっかりと切り分けて、できる部分に関しては自分たちで管理していくというのが『セルフ防虫管理』の考え方です。
この記事では、食品工場で、セルフ防虫管理をする場合の進め方について簡単にご紹介します。

 

 

セルフ防虫管理の 進め方について

それでは、セルフ防虫管理を実際に導入する場合の大まかな進め方についてご紹介します。防虫管理であっても、ISO認証やHACCPシステムなどの「マネジメントシステム」同様、「目的・目標・方針」が存在して、それに基づいて「PDCAサイクル」を回すという大原則は同じだと言われています。ただし、初めてセルフ防虫管理を導入する場合には、以下のような流れで「PDCAサイクル」へ移行していくことでスムーズに事が進むとされています。

  1. 『Check(現状把握)』・・・現状を評価・検証する
  2. 『Action(事前改善)』・・・事前に重要な問題を改善する
  3. 『Plan(管理設計)』・・・管理計画(管理仕様・管理目標など)を作成
  4. 『Do(モニタリングによる監視)』・・・それを実行する
  5. 『Check(結果の評価・記録)』・・・モニタリング結果の評価と記録
  6. 『Action(問題の改善・効果判定)』・・・問題の改善と効果判定

初めてセルフ防虫管理を導入する場合、上記のような「CAPDサイクル」を回し、「PDCAサイクル」へと移行すれば、円滑にスパイラルアップが進むと考えられます。それでは以下で、それぞれのステップについて、もう少し詳しく説明します。

 

①Check(現状把握)

まず最初にすべきなのは「CAPDサイクル」の「C(評価)」で、工場の現状を把握するということです。防虫管理については、この現状把握こそがその根幹だと言えます。

現状把握をする為の方法もいくつか存在しますが、可能であれば、実際に昆虫捕獲用のトラップ類を使用するのが良いでしょう。一定期間、捕獲トラップを設置してみて、それらの捕獲状況から、現状にどのような問題があるのかを集積していきます。これらの診断調査は「リスクアセスメント」と呼ばれ、この診断結果によって「今すぐ、緊急的に取り組まなければならない深刻な問題があるか?」がわかります。
なお、防虫管理の専門家がリスクアセスメントを行う場合、「マネジメントシステムの運用上、PDCAのどの要素に問題が存在しているのか?」をチェックします。
まずは自社の工場に存在する問題を見つけ、何を改善すればPDCAサイクルが円滑に機能するかを客観的に確認することが大切です。

 

②Action(事前改善)

①の現状把握で何らかの問題が確認された場合、緊急的な対策を優先して行い、リスクをリセットしておく必要があります。これが、管理に入る前の事前改善となります。

それでは、工場の防虫管理上リセットすべきリスクとはどのように定めれば良いのでしょうか。工場の防虫管理上、考えるべきリスクは二つしかありません。それは、「外部侵入要因」と「内部発生要因」の二つであり、どちらを基準とするかが最も重要です。なぜなら、そこに存在する昆虫をどう捉えるのかによって必要な対策が全く変わってくるからです。当然、対策の焦点がずれていれば、問題を解決することができず、再発してしまうリスクが残ります。

 

③Plan(管理設計)

次は、管理設計です。セルフ防虫管理を行う場合、具体的なモニタリング仕様なども自分で決めていく必要があります。
ただし、最初はそこまで難しく考える必要はなく、例えば、「ライトトラップなら各室内に1台」「床置き式トラップなら各室内1~3台」など、まずは置いてみて、それを月1回程度交換してみるなどとすれば良いです。これを続けていけば、後は進めていくうちに必要な仕様が分かってくるものです。

 

④Do(モニタリングによる監視)⇒⑤Check(結果の評価・記録)

実際にモニタリングを進めてみて、その結果を評価・記録していきます。この際、評価点として大切になるのが、「捕獲昆虫総数」「同種の昆虫の多量捕獲」の2点です。これは、「捕獲昆虫総数」の高さが外部侵入リスクを意味していることや、「同種の昆虫の多量捕獲」が内部発生リスクの可能性を伝えているからです。可能であれば、昆虫の大まかな分類なども行えれば良いのですが、そうした専門知識はおいおいつけていけば良いでしょう。

さらに、上記のような記録は「継続的に行う」ということがとても大切です。なぜかというと、どのような工場でも、その工場固有の「特性」というものが存在しています。そして、そういった特性は、継続して集めたデータを分析することでようやく発見できる物だからです。面倒に思うかもしれませんが、その特性を見つけることができれば、リスクを先回りして予防することができるようになるなど、非常に効果的に防虫管理が実現します。

 

⑥Action(問題の改善・効果判定)

モニタリングの結果、問題があればその対策を実施します。防虫対策は、ただ闇雲に行えば良いというものではなく、モニタリングの数値結果に基づいて行うのが原則です。さらに、何らかの対策を行った場合、きちんと「効果判定」を行うこともとても大切です。
例えば、対策した箇所の近くにトラップを設置してみて、対策前と比較して、トラップの捕獲がなくなれば効果があったということを示します。

 

 

まとめ

今回は、セルフ防虫管理の基本的な進め方について簡単にご紹介してきました。防虫管理に関しては、「専門性が高い」というイメージがあることから、管理そのものを外部委託しているというケースが多いです。もちろん、それによって害虫の発生などが全て防げているのであれば、問題ないでしょう。

ただし、本来工場の状態などについて、最も多くの生情報を持っているのは、現場で働く従業員です。つまり、現場の従業員が正しい知識を持つということは、何か問題が発生した場合でも、より早く問題を発見することができるようになるはずです。「セルフ防虫管理」に関しては、業者に委託していた部分を自社の従業員で賄うようになることから「コスト削減」に有効な対策というイメージを持つ方が多いです。しかし、単なるコスト削減対策としてではなく、問題の早期発見ができるようになり、重大なリスクを事前回避できるようになるということが、最も大きなメリットだと考えられます。

この記事の参考資料:月間工場長 5月号

この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。