食品
投稿日:2022.01.25
更新日:2022.09.26
2020年7月からは、コンビニやスーパーなどでレジ袋の有料化がスタートするなど、日本国内でも脱プラスチックの動きが加速しています。さらに、つい先日も「プラスチックごみを減らし資源循環を促す新法を2022年4月1日から施行する」ことなどを含めた政令が閣議決定されたというニュースが報道されていました。これにより、2022年4月からは、コンビニや飲食店、ホテルなどで無料で提供されていたスプーンや歯ブラシ、ハンガーといった12のプラスチック製品について、有料化や代替素材への切り替え、受け取りを辞退した客へのポイント付与などが求められることになっています。
そこでこの記事では、そもそも脱プラスチックが必要になった要因が何かをおさらいし、日本国内で取り組まれている具体的な対策について解説していきます。
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これほどまで『脱プラ』の動きが加速している理由は何があるのでしょうか?以下で簡単にご紹介しておきます。
私たちの日常生活を考えた場合、プラスチックに触れない日などないと言えるほど、非常に身近な存在になっています。例えば、さまざまなドリンクが入れられているペットボトルを始めとして、スーパーに並ぶ食品の包装材などにもプラスチックが使用されていますが、こういったプラスチックは使い終わった後、どうなっているのでしょうか?ほとんどの方は、使い終わったプラスチックは、適切に回収されリサイクルされていると考えていることでしょう。
しかし、適切に回収されないプラスチックが非常に多く、それらが地球環境に多大な悪影響を及ぼしていると言われています。テレビや新聞などで、海岸に打ち上げられたプラスチックごみのニュースを目にしたこともあると思いますが、現在世界中の海岸で海洋ゴミ問題が発生していると言われています。そして、こういった海を漂う海洋ゴミについて、なんとその約7割をプラスチックごみが占めている(個数ベース)と言われる状況になっています。
こういった海を漂うプラスチックごみは、以下のような問題を引き起こしています。
まずは海洋生物への悪影響です。海を漂うプラスチックごみが増加し、それをエサだと勘違いして誤飲してしまうケースが相次いで発見されています。また、過去にはウミガメの鼻の孔にプラスチックストローが刺さっていて、カメが涙を流している画像が世界中に衝撃を与えたというニュースもあります。海洋生物がプラスチックを誤飲した場合、消化器官を傷つけたり、食欲の減退、成長の阻害などさまざまな被害が考えられると言われています。このままの状況が続けば、2050年には海を漂うプラスチックの量が魚の量を上回るという予測も出ています。
海を漂うプラスチックの中には大型のゴミもあります。そして、そういった大型ごみが船舶に衝突し損傷してしまったり、スクリューに絡まって故障する危険があります。
世界中に「美しい海岸」が有名な観光地は多いですが、近年、海岸に流れ着くプラスチックごみが景観を壊しているという問題に直面しています。また、観光地でなくても、沿岸地域は多くのゴミが流れついてしまうことで、衛生上の問題なども発生しています。大勢の観光客が押し寄せるような観光地であれば、清掃スタッフを配置してゴミの除去なども行えますが、そうでない場合、なかなか難しいのが現実です。
上記のように、世界中の海を漂うプラスチックごみは、既にさまざまな面に悪影響を及ぼしていると言われています。
さらに近年では、長期間放置されたプラスチックごみが小さく粉砕されたマイクロプラスチックも問題視されるようになっています。プラスチックは、自然に分解されることが無い素材と言われていますが、長期間海岸や海の上に放置されていれば、紫外線などの影響を受け、強度が落ちてしまい小さなプラスチック片に粉砕されてしまいます。そして、そのプラスチック片を魚が食べて、その魚を食べる人間の体内にマイクロプラスチックが入っていると言われています。実際に、海外の研究チームが行った調査によると、人間の便からプラスチックが検出されたという例も既に存在するようです。
現在のところ、マイクロプラスチックが人間の体内に入ることによる健康被害の有無については、まだ結論が出ていない状況です。しかし、そもそもプラスチックは、食べるものとして作られているわけではないので、体内に入ることで人体に悪影響を及ぼしてしまう可能性が無いとは言えないでしょう。
それでは、食品業界で取り組まれている脱プラスチックへの対策について、いくつか具体的な事例をご紹介しておきます。
昔から土産物として人気の「鳩サブレー」ですが、2021年10月から、使い捨てプラスチック使用量の削減対策をスタートしています。具体的な対策としては、もともとプラスチック素材を使用していた袋入り『鳩サブレー』については、プラスチック素材を紙素材に変更し、箱入りおよび缶入り『鳩サブレー』については、箱の中に使用されている仕切りトレーについて、サトウキビの搾りかすを原料とした紙素材に変更しているとのことです。
こういった対策により、年間約100トンものプラスチック使用量の削減が実現するとしています。
日常生活の中でも非常に利用頻度の高い調理用油ですが、基本的にペットボトルを大きくしたようなプラスチック容器に入っているというイメージですよね。中には、ガラス瓶に入っているタイプもあるのですが、使用頻度の高いサラダ油などは、プラスチック容器で販売されているケースがほとんどだと思います。
キャノーラ油などで有名な、株式会社J-オイルミルズでは、昨年8月下旬から2種類の油種で環境・使用性に配慮した紙パックを採用するようになっています。そして、2022年3月からは、家庭用油脂商品を「スマートグリーンパック」シリーズと呼称し紙パックを採用した製品展開を行っていくとのことです。
これにより、大幅なプラスチック削減が期待できます。
お菓子メーカーの『湖池屋』は、漂着ゴミのリサイクルを目的としたサステナビリティ推進活動を開始すると公式サイトで発表しています。具体的な取り組み内容は以下に引用しておきます。
2021年については、宗像市の掲げる「Save the Sea」活動を地域の皆様とともに推進していきたいとの想いから、宗像市とともに、海岸に打ち上げられた漂着ゴミをリサイクルすることを目的としたサステナビリティ推進活動を展開するため、革新的なアイディアで、今までリサイクル不可能と思われてきたもののリサイクルを実現し、これまでも海洋プラスチックを使った製品を提供してきたグローバル企業、テラサイクルの協力を得られることとなりました。
今後は、宗像市の市民、地元漁協との協力・連携を取りながら、※宗像市・テラサイクル・湖池屋の3社による新たなサステナビリティ推進活動を展開します。
※宗像市の海岸に打ち上げられた漂着ゴミをはじめ、宗像市で回収されたゴミの一部をリサイクルし、海洋プラスチックとして製品の開発を行う予定です。(2022年以降制作予定)
引用:湖池屋プレスリリースより
今回は、世界中で急速に進み始めた脱プラスチックの動きについて、なぜこれほどまで脱プラスチックの動きが加速しているのか、また日本の食品関連企業でどのような取り組みが行われているのかについてご紹介してきました。
脱プラスチックの動きは、自然に分解されることのないプラスチックが、適切にゴミとして捨てられず、海などに流出することで、海洋生物に多大な悪影響を及ぼしていることが世界中でも問題視されるようになっています。
その現状を打破しようと、多くの食品関連企業では、脱プラスチックへの具体的な取り組みが続々と発表されるようになっています。今後も、脱プラスチックの動きに注視しつつ、自社で取り組めそうな方法を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。