食品
投稿日:2020.02.13
更新日:2024.08.27
食品工場では、衛生面の管理と作業員の安全を守るために床面の状態を綺麗に保つ事が非常に重要です。特に、床が濡れると滑りやすくなり、労働災害のリスクが高まります。
この記事では、食品工場に適切な塗床材の選び方、床塗装のメリット、さらにHACCP基準に合った床材の特徴などについて詳しく説明します。
Contents
水分を含む食品の加工を行う工場では、一般的に洗浄に水を使用します。 そのことを考慮して選定された塗床材であればある程度の抗菌性や撥水性を持っているため、衛生管理のオペレーションを守っていれば問題ないでしょう。 しかし、経年劣化や、日々の摩耗などにより、起こるクラック(=ひび割れ)や、床や壁などに付着した水をそのまま放置すると、細菌の温床となり、食中毒を引き起こす危険があります。 また、水や油で濡れた床に足元を取られ、転倒した経験を持つ方も少なくないでしょう。 食品工場内には食材を加工するためのさまざまな道具や機械設置されており、このような工場内で転倒すれば、大怪我につながりかねません。そのため、衛生管理がしやすいうえにできる限り滑りにくくするための対策も求められます。
築年数がある程度経っている食品工場は、床がコンクリート素地で仕上げられている場合があります。そのうえ経年によるクラック(=ひび割れ)が発生しても、長年床に対する衛生管理が行われてこなかったことにより雑菌や汚れが付きやすい状態になっています。 近年、食品加工工場の衛生管理システムである『HACCP』の制度化が決定しました。 それに伴い、HACCPに適した塗床材を使うことによって、コンクリート床や古い塗床材がもたらす細菌の繁殖や汚れが付着するなどのリスクを大きく下げられるほか、転倒などの労災発生を防ぐことに役立ちます。
塗床材の選定が適切でなかった場合、耐久性が低くなり、耐薬品・耐荷重などではがれや割れの原因となります。食品工場の床は湿度や薬剤にさらされることが多く、耐腐食性や耐摩耗性に優れた素材を選ぶことが重要です。
食品工場では重い機械や装置の設置、貨物の運搬などが行われます。これらの物理的ストレスにより、床面が割れたり損傷したりすることがあります。
床材料は温度変化により膨張と収縮を繰り返します。急激な温度変化がある場所では、床材料の変形や割れの原因になります。
食品工場では洗浄剤や消毒薬などが使用されます。これらの化学物質が床面と反応し、変色や劣化の原因になることがあります。
これらの問題を防ぐためには、適切な床材料の選定、専門家による適切な施工、定期的なメンテナンス、設計時の条件で定めた運用や洗浄方法を守ることが重要です。
また、食品工場では衛生面や安全性の観点から床の状態を常にチェックし、必要な対策を早めに行うことが大切です。
床塗装には滑り止めの効果ををもつ商品があるため、作業員が作業中に起こる事故や転倒を防止できます。特に水を使う環境や油の付着が多い場所では、滑りやすい床は重大なリスクとなります。適切な床塗装は作業員の安全を確保し、労働災害を減少させる役割を果たします。
床塗装をすることで、清掃しやすく衛生的な状態を保ちやすくします。清掃しやすい床面は埃や汚れの蓄積を防ぎ、清潔な工場環境を維持するのに役立ちます。食品工場など、衛生さを必要とされる分野では特に重要です。
床塗装は、床面を損傷や汚れから保護する役割を果たします。工場では重い機械や装置が使用されるため、床面は様々な負荷にさらされますので、塗装は、床の表面を耐久性のある塗床材、摩耗や傷つきを防止できます。また、化学物質や油、薬品などの漏れや流出から床を守ることが出来ます。
適切に施工された床塗装は耐久性が高く、長期間にわたって効果を維持できるため、床の定期的な補修や交換の頻度を減らし、メンテナンスコストを削減できます。
工場の床塗装は生産性や労働環境の向上、設備の保護、衛生面の維持など、重要な役割を果たします。適切な床塗装を選定し、定期的なメンテナンスを行うことで、工場全体の運営においてプラスの影響を与えることができます。
食品を扱う工場では、製品の安全を確保する衛生管理の手法としてHACCPが導入されるようになりました。
これに伴い、塗り床材も安全性・衛生性・耐久性の高いHACCP対応のものが採用されています。
HACCPの要求事項を満たす床材は以下の点をポイントにして選ぶことをおすすめします。
●安全性
・滑りにくい
・歩きやすく疲れにくい
●衛生性
・掃除しやすい
・溝や凹凸がなく掃除しやすい
・汚れに強い
●耐久性
・塗装が剥がれにくい
・酸やアルカリに強い
・水、熱湯、油に強い
・補修や修繕がしやすい
ここでは、食品工場で使用される塗床材の種類について説明します。
ウレタン樹脂系塗料は、耐久性や耐薬品性に優れ、摩耗や衝撃に強く、抗菌・防菌効果も備えています。食品工場のクリーンルームなどに適しています。
エポキシ樹脂系塗料は、ウレタン樹脂系よりも耐酸性・耐アルカリ性に優れ、衝撃吸収性が高いのが特徴です。食品工場の製造エリアや加工室など、頻繁に使用される床面に適しており、高い耐久性で長期間使用できます。
シリコン樹脂系塗料は、高温に耐える性質があり、加熱した食品を扱う床面に最適です。また、耐薬品性にも優れ、化学薬品や酸・アルカリに対して強い塗料です。
MMA樹脂系塗料は、速乾性に優れ、施工期間を大幅に短縮できます。耐久性や耐薬品性も高く、防滑性能も備えています。
一方で、他の塗料に比べ臭気が強いため、施工期間の短縮を第一優先にする場合に採用されることが多いです。
塗料ではありませんが、給食センターや厨房で採用される長尺シートについて紹介します。
長尺シート床材の特徴は、表面はフラットなため清掃が簡単で、耐摩耗性が高く、細菌の増殖を抑制する効果を持つものが多く、抗菌効果も優れていることから給食センターや厨房でで採用されています。荷重がかり塩ビ層が沈み込むことにより、防滑用の骨材が表面に現れて滑りにくくなる特殊な商品もあります。
食品工場などの過酷な環境では、耐久性に優れ長期間使用でき、臭気が少ない水系硬質ウレタン塗料を採用することが多いです。
では、食品加工工場にとってふさわしい塗床材とはどういったものでしょうか。 まずは使用用途に適した塗床材の選定を行うために区域を分類します。食品工場内は工場の規模によって区域の分け方は異なりますが、大まかに3つの種類の区域に分類されます。衛生面で特に気を使わなければならない「清潔作業区域」、次いで衛生度が高い「準清潔作業区域」、そして、梱包などが行われる「汚染作業区域」です。当然のことながら、それぞれの区域に合った塗床材が求められます。
主に食品の充填梱包工程を行なう清潔区域、食品の加工・調理工程を行う、準清潔区域では有機系(合成樹脂系)塗床材である水系硬質ウレタンの塗床材が最適です。製造工程で考えられる、水や熱湯に耐えられるうえ、薬品やアルカリ、スチーム洗浄などにも対応できるほか、抗菌性ももつ素材です。また、油物を製造するフライヤー周辺は高温の油がはね落ちる可能性があるため、同じ素材の中でもより、高温に耐えられる厚みを設ける必要があります。
素材の受け入れ、前処理、保管を行う汚染区域では、次の準清潔区域に細菌や害虫を持ち込まないために汚れが付着しにくい塗床材や、強度が強く、ひび割れが起こりにくい塗床材を使用しましょう。 清潔区域、準清潔区域までの床の仕様は不要ではありますが費用に余裕があるのであれば同じ床材を使用する事が安全ではあります。 しかし費用対効果を考えるのであれば、床の仕上げ材に関しては異物混入に繋がるリスクが低い建材での検討を行いましょう。 例えば、コンクリート床の表面を強化する様な表面強化材が最適であります。
製品の安全を守るとともに、食品工場内で働く従業員の安全も守らなければなりません。 食品工場内で多くみられる事故は、床が水や油で濡れていることによる転倒事故です。 労災を発生させないよう、滑りにくい床にする必要があります。 そこで最適な塗床材は防滑仕様のものです。塗床材の中に骨材や珪砂を混ぜ込んだ仕様で、表面に凹凸があるため、滑りにくくなります。一方で、凹凸に汚れがたまりやすく、清掃がしにくくなる可能性があるため、仕様を決定する前に実際に清掃試験を行うとよいでしょう。
ここでは使用環境に応じて適した床材について説明します。
回転釜付近など熱水を使用するエリアでは、熱水が床に頻繁にかかる可能性があります。そのため、熱水温度に耐える製品を選ぶ必要があります。水性硬質ウレタンは優れた耐熱性能を持ち、一般的に120℃の熱水に耐えることができます。
作業場や通路など、台車などが使用され、物理的な衝撃を受けやすい場所では、重量物の移動に対する耐衝撃性と耐摩耗性が重要です。代表的な床材として、エポキシ樹脂や水性硬質ウレタンなどの塗り床材が挙げられます。
軽度な使用環境ではエポキシ樹脂系が適しており、一方で過酷な使用環境では水性硬質ウレタンが適しています。また、仕上げに関しては、平滑なタイプや防滑なタイプを選択することができます。
食品工場のドライエリアでは無機質系硬化コンクリート床材、塗り床材、長尺塩ビシート床材のような衛生性、耐久性、安全性などの特性を備える床材を選ぶのがおすすめです。
食品工場のウェットエリアでは水を使って作業を行うことが多いので、一般的な選択肢として耐水性、防滑性、清潔性、安全性の高いエポキシ樹脂や水性硬質ウレタン床材となるが、メンテナンス性を考慮すると水性硬質ウレタン床材が適しています。
ただし、具体的な場所や状況によって最適な床材が異なる可能性があるため、専門業者に相談することがおすすです。
ここまでご説明したように、食品工場では濡れた床に対する対策だけでなく、作業区域の環境に応じた床材選ぶことが必要です。
作業工程で使用する機械や薬品、環境を踏まえた上で必要な機能を備えた塗床材を選定しましょう。
確認する項目としては以下の4つの機能面から検討してみてください。
・耐熱性
・耐薬品性
・耐荷重性
・防滑性
前述の通り、床が濡れていることで多くのデメリットがあるため、設計計画では十分な検討が必要です。 一番大切なことは、濡らさないこと・濡れにくいことです。濡れる場所を限定する間仕切り位置や床勾配の設計計画が重要です。施工が完了してから是正を行うことが困難であるため、設計計画段階から製造や清掃の運用方法など緻密なシミュレーションが求められます。 扱う商品によって極力濡れている状態を避けたい場合は、ふき取る際に使用する清掃具の管理方法の検討まで行わなくてはなりません。 実際に工場を稼働した際に、「失敗した」とならないためにも、食品工場の新設や老朽化した床の改修をお考えの際は、食品加工工場の設計・建設経験が豊富な建設会社に相談しましょう。
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この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。