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投稿日:2021.04.08 
更新日:2022.09.26 

食品工場で進むロボット化!実際に導入された事例をご紹介!

今回は、経済産業省が公表している「ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018」より、食品製造現場でのロボット化事例と導入による効果をご紹介していきます。

少子高齢化などの影響により、さまざまな業界で人手不足が深刻化していると言われる中、ロボットなどの最新テクノロジーの導入による省人化・省力化が注目されています。実際に、アイリスオーヤマのつくば工場では、工場ラインの無人化が既に実現されており、一ラインに1人の従業員がいれば、機械が稼働し生産ができるという状況になっています。このつくば工場は、延べ面積約11万㎡の6階立ての大規模工場なのですが、工場内の実質従業員は約50名程度しかいないそうです。さらに、今後は工場ラインの監視も遠隔で行うことを計画しており、将来的には現場に人が一人もいなくなるという可能性が高いと言われています。

そして、私たちの日常生活を支えてくれる食品工場でも、ロボットによる自動化が急速に進んでいます。もともと、食品工場は「生産ラインや装置の入れ替え、生産条件の再設定が頻繁に起きる」ことや「形状や品質が不ぞろいな原料を扱うことが多い」などと言った理由で、ロボット化が難しいと言われていました。しかし、ロボット自体の急速な進化もあり、次々に自動化を始める工場が登場しています。さらに、新型コロナウイルスのような問題があった際でも、食品の供給を止めるわけにはいかない業種ですのでBCPの面からもロボット化を検討し始める企業が急増していると言われています。
そこでこの記事では、食品の製造現場に実際に行われたロボット化事例と、それによる効果をご紹介します。

食品工場のロボット導入事例をご紹介!

それでは、製造現場に実際に導入されたロボットと、導入による効果をご紹介していきましょう。製造現場ごとにさまざまな課題があるかと思いますが、実際の導入事例をヒントに、自社に導入するのであれば、どういったものが良いのかを検討するヒントになれば幸いです。

不規則に配置されたレトルトパウチ製品の整列作業のロボット化

まずは、カレー、釜飯などのレトルト食品を製造する食品工場での事例です。今回のロボット化は、商品の包装工程に導入されたものです。

存在していた課題

レトルトパウチ製品の包装工程では、殺菌中に水流と浮遊によりトレー内の中でパウチが様々な方向に乱れた状態となってしまう。それを3名の従業員が手作業によりパウチ供給を行っていた。この作業が重労働なうえ、人手不足が深刻となりつつあることから、ロボットの導入による自動化を検討し始めた。

上記のような課題を解決するため、パラレルリンク型ロボットと高性能カメラによる画像処理技術を組み合わせたシステムの導入を行ったそうです。これにより、重労働であった3名によるパウチ供給作業はトレー台車の搬入・搬出作業等のサポート要員1名のみとなり、一日当たり4名の少人化が実現したとのことです。さらに、熟練担当者に頼らない供給体制が整えられたことも大きな効果だと言えます。

ロボット導入による効果
  • 労働生産性が約3倍
  • 労働環境の改善(高温多湿下、無理な体勢での作業が少なくなったことによる)
  • 作業者の熟練度による供給量のばらつきなどがなくなった

参考:ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018 P.10、11

協働ロボットとパラレルリンクロボットを組み合わせたラベル貼付システム

次は、消費期限ラベルの貼付け作業を自動化した事例です。この企業では以下のような課題をロボットの導入で解決したとのことです。

存在していた課題

従来は、冷凍製品の解凍後、56製品・約23,000個に対して、作業員5名体制で手作業にて賞味期限ラベルの貼付けを行っていたそうです。しかし、納品時間の関係から、作業が深夜作業になることで、作業員の確保が困難になってきたことが大きな課題となっていました。また、多人数による作業になるため、貼付け精度のばらつきや貼付けミスなどが発生してしまうことで、顧客からのクレームにもつながっていたということが課題でした。そこで、ラベル貼付け作業の省人化などを目的として、今回のロボット導入を行ったそうです。

ラベル貼付け作業の自動化のため、協働ロボットとパラレルリンクロボットを組み合わせたシステムを導入。これにより、ラベル貼付け作業のライン化が実現し、さまざまなメリットが得られています。

ロボット導入による効果
  • 労働生産性が約2.5倍
  • 従来は5名の従業員が必要だったが、2名での作業になり大幅な省人化を実現
  • 貼付け精度のばらつきがなくなり、品質が安定

参考:ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018 P.12、13

ロボットによる食品の重量検査作業とパレタイズ作業の標準化

食品製造現場では、重量物を人力で移動させなければならない作業も多いなど、過酷な労働環境が人材確保を困難にしている面もあります。この企業では、そういった重労働のロボット化を進めています。

存在していた課題

従来は、結束後の製品(10~12㎏)600~700箱/日を、人力によって結束機からハカリへ移動させ重量検査を行い、パレットへの振り分け、パレタイズを行っていたそうです。しかし、今後さらに人手不足が深刻化すると懸念されることから、工場内での過酷作業や単調な作業の自動化を検討したとのことです。

この工場では、フレキシブルハンドによる多品種対応、ロードセルやカメラによる製品識別機能を組み合わせたロボットの導入を行っています。このロボットの導入により、コンベアに結束した製品を流すだけで、重量検査と各パレットへの製品振分、パレタイズ作業が自動で行われるようになり、パレタイズ専属要員が不要になるなど、過酷な作業部分の省人化が実現しています。

ロボット導入による効果
  • 労働生産性が約5倍
  • 重量物を人力で運ぶ必要が亡くなったなど、労働環境が改善
  • 省人化を実現

参考:ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018 P.12、13

まとめ

今回は、食品製造現場で進められているロボット化の成功事例についてご紹介してきました。もともと、他の業界に比べてロボット化・自動化が進んでいた製造現場ですが、食品製造現場は取り扱う原材料の形状が不ぞろいであることや徹底した衛生管理が求められることなどから、自動化が非常に難しい業界と言われていました。しかし、ロボット自体が急速に進化してきたことで、最近では自動化による省力化・省人化を検討し始める企業が増えていると言われています。

ロボットによる自動化は、単なる省人化だけでなく、人為的ミスの削減や製造する製品の品質を安定させるなど、さまざまなメリットがあると考えられます。もちろん、ロボットの導入には、コストがかりますので、かけたコストがどの程度で回収できるのかもしっかりと検討しながら計画を進めるようにしましょう。

なお、「ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018」には、食品製造現場以外でのロボット導入事例などもたくさん載っていますので、ぜひ一度確認してみてください。自社のロボット導入に何か役立つヒントがあるかもしれません。

参考:ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018

この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。